安全衛生レポート【2020年8月】

安全衛生レポート【2020年8月】

わが国の労働災害のうち、じつに3分の1が建設業界で起きています。現場は常に危険と隣り合わせです。どんなシチュエーションで事故が起きやすいのかということは、現場で働いている人ならば身につけている知識かもしれません。

実際に、どのような状況で、どういった事故が起きているのかについては、厚生労働省が「労働災害発生状況」というデータにまとめて、毎年公表しています。今回はそうしたデータを中心に、2020年の労災や安全衛生についてまとめました。

2019年の労働災害発生状況、死亡者・死傷者共に減少

建設業全体の労災発生件数は、長期的に見るとゆるやかに減少しています。

厚生労働省がまとめた「労働災害発生状況(2019年1-12月)」によれば、労災で亡くなった人の数は、建設業界全体で269人でした。これは、統計を取りはじめてから最も少ない人数です。死傷災害も1万5183人と、前年比で191人減少しました。
従来より最も多い事故型である「墜落・転落」への対策として、2019年2月1日より義務付けられた高所作業でのフルハーネス型安全帯の着用が効果を上げている事が、少なからず数字として表れているようです。

◆事故の型別死亡者数(建設業)

事故の型別死亡者数

参考|厚生労働省「労働災害発生状況」に基づいて作成

◆事故の型別死傷者数(建設業)

事故の型別死傷者数

参考|厚生労働省「労働災害発生状況」に基づいて作成

それでも死亡者数・死傷者数ともに、最も多かったのが「墜落・転落」でした。死亡事故の半分近く、死傷者の3分の1が墜落・転落事故であることから、労災防止の観点から見ても、もっとも対策を必要とするのは墜落・転落事故であることがわかります。

建設業は高所での作業が多く、重い資材を抱えての上り下りなども頻繁にあるため、起こりやすい事故とも言えます。墜落・転落事故減少に効果的なフルハーネス型安全帯の着用や手すりの設置を徹底することは必要ですが、あまりにがんじがらめな規則は、かえって作業者の負担を増やすため賛否両論があり、現状を踏まえた対策が求められています。

 

派遣労働者・外国人労働者の労災状況

今年度の建設業界における派遣労働者の死傷者数は前年比20人減の83人となり、100人を下回りました。死亡者は6人で、ほぼ横ばいの結果です。

前回の派遣先と違う種類の現場で働いたり、他職種から建設業関係の職種に変わったため不慣れであるなどの要因で労災の増加が危ぶまれており、派遣元・派遣先での安全対策が求められています。

派遣労働者の労働災害

参考|厚生労働省「平成31年/令和元年労働災害発生状況の分析等」に基づいて作成

派遣労働者の労働災害による死亡者数

参考|厚生労働省「平成31年/令和元年労働災害発生状況の分析等」に基づいて作成

外国人労働者の労災調査では、全産業の死傷者数が3928人となる中、休業4日以上の死傷者数のうち、約4分の1を占める583人が建設業に従事する労働者でした。

文化的な背景の違いなどで、普通なら感覚的にわかっているはずの危険予知ができずに、事故に巻き込まれてしまうケースも見られます。安全面での手厚いフォローが求められています。

外国人労働者の休業4日以上の死傷者数

参考|厚生労働省「平成31年/令和元年労働災害発生状況の分析等」に基づいて作成

高齢化に向け、厚労省が「エイジフレンドリーガイドライン」打ち出す

建設業界では高齢化がすすみ、技能者では60歳以上が全体の4分の1になりました(総務省「労働力調査」)。若手と言われる29歳以下は約11%であり、中途採用を含めても必要な労働力の確保が難しいので、今後ますます高齢の働き手に頼らざるをえない状況になる可能性が高いと見られています。

高年齢になると身体機能が衰え、休業も長期化することがわかっています。こうした働き手をフォローするために、厚生労働省は今年、「エイジフレンドリーガイドライン」を作成しました。何に配慮すべきなのか、また、高齢者自身はいかに安全や健康を維持すべきかを取りまとめています。

また、中小企業に向けて「エイジフレンドリー補助金」を創設し、

  • 身体機能の低下を補う設備や装置の導入
  • 働く高齢者の健康や体力のチェック
  • 高齢者に特化した安全衛生教育の実施

などに100万円を上限とした助成金を支給することを決めました。

最近は70歳まで定年年齢を引き上げる動きもあり、日本は「高齢者が働きつづける社会」に変わりつつあります。働き手に合わせた環境づくりはますます重要になるはずです。

参考:厚生労働省「エイジフレンドリーガイドライン」に基づいて作成

「3密」避けて安全大会はさま変わり

新型コロナウイルスの感染拡大により、各地でイベントごとが中止に追い込まれました。ホテルの会場やホールに集まって開催する安全大会も、ウイルス感染を引き起こす「3密」になるとして、自粛・延期した団体が多かったようです。

一方で、テレビ電話を活用して、安全大会をオンラインで開催したり、規模を縮小して現場代理人とガードマンを対象に開催するなど、おのおのが工夫を凝らして現場の安全を再確認する年になりました。