建設業における女性労働者

建設業における女性労働者

今回のWAT REPORTでは、総務省の「労働力調査(2020年9月)」および帝国データバンクの「女性登用における企業の意識調査(2020年)より、建設業の各職場における女性比率や女性登用についてまとめました。
また、国土交通省「建設産業女性定着促進計画」「女性活躍加速のための重点方針2020」を参考資料としました。

概要

昨今の若い世代においては、性差別的な考え方はほとんど消滅したと言ってよいでしょう。しかし、建設現場においては、未だに圧倒的に多くの働き手を男性が占めているという実情があります。
建設業は元々『男性の仕事』というイメージが強く、特に現場労働者には女性がほとんどいませんでした。しかし、少子化による働き手不足や、多角的なものの見方をする人材の必要性といった観点から、最近では現場においても女性の入職が進められています。
女性はライフステージによって家庭との両立が必要になるため、働き方を柔軟に変える必要が あります。そのためには、新たな制度設計や働き方改革も必要です。
これまでとは目線や立場の大きく異なる人材が増えることは、ダイバーシティを重視するこれからの社会において、もはや必然です。
一方で、就労の継続性や環境の整備などについては、徐々に解決していくべき課題と言えます。

女性の割合はどの産業で多いのか。
建設業は?

女性就業者の割合を産業別に見ると、最も多いのは「医療・福祉系」の75.3%でした。
「宿泊業、飲食サービス業」も6割以上が女性で、「生活関連サービスや娯楽業」「教育・学習支援」、「金融業・保険業」、「卸売業・小売業」の4業種で5割を超えています。
これらの業種に共通するのは、対人サービスが多いことです。特に医療・介護系は、夜間勤務が 多いにもかかわらず、多くの女性に選ばれています。
女性の割合が半分以下なのは、17業種のうち11業種で、中でも「建設業」「漁業」「電気・ガス・ 熱供給・水道業」は2割を下回ります。
これらの業種に共通しているのは、危険を伴う現場作業があること、自然や機械を相手にしていることです。
これは、女性割合が3割を切っている「製造業」「情報通信業」「運輸・郵便業」も同じです。
(1)産業別 女性就業者の割合(2020年9月)_re
女性が多いのは「対人サービス業」であり、それ以外は比較的割合が低いことがわかります。
女性に興味を持たれやすいのが「対人サービス業」であるため、女性の入職者を増やすためには、求人募集をかける際に、対人対応をする場面について伝えることが有効かもしれません。
現場における対人折衝や、「人が生活する家や、職場となる建物を作っている」という、ライフスタイルにまつわる側面を生かし、人々の生活に密接に関わっている産業だと伝えるなどの工夫もできるのではないでしょうか。

参考|総務省「労働力調査」より

建設業における女性の割合の推移

過去10年間、労働市場における女性労働者は4割~4.5割程度で推移しています。パートや非正規雇用といった就労形態が多いとはいえ、日本の働き手の約半数は女性です。
建設業においては、全産業と比較しても女性の割合は少なく、全体の1.5割程度を占めるにとどまっています。
しかし、2011年には14.0%だった女性比率が、2019年にはわずかに上昇して17.1%となっており、10年前と比べても微増している印象です。
ただし、2020年には新型コロナウイルスの感染拡大により景気が縮小したため、今後、非正規雇用の多い女性の失業などで変化が起きる可能性もあります。
(2)過去10年の女性割合の推移

参考|総務省「労働力調査」より

建設業における職種別の女性割合

建設業において職種別に女性の割合を見ると、事務従事者は75.3%と男性よりも女性が多い結果でした。
また、専門的・技術的職業従事者で7.7%、管理的職業(課長職以上の職種)では約10.5%が女性という結果でした。
働き方において、現場は男性、バックオフィスには女性という棲み分けがあることが見てとれます。
また、過去10年間において、女性の管理職割合はほとんど変化がなく、専門的・技術的職業従事者のみ、わずかに変化しています。
(3)過去10年の職種別女性割合の推移_2

参考|総務省「労働力調査」より

女性登用に対する企業の意識調査では

帝国データバンクが毎月7月に実施する「女性登用に対する企業の意識調査(2020年)」では、同社が2万3,680社にアンケート調査し、1,732社(49.5%)から回答を得ました。
これによると、女性管理職を全体の30%に引き上げるとした政府の数値目標に対し、これを超える企業は、業界別にみて小売や不動産、サービス業が多く、建設業では5%程度でした。
女性管理職割合の平均_re

参考|帝国DB:女性登用に対する企業の意識調査/2020年より

近年では施工管理技士の資格試験で、女性の受験者が増加していることもあり、今後、責任ある立場に就く女性の割合が増加する可能性もあると予測できます。
また、同調査では、アンケート時の建設業からのコメントとして「建設業は現場仕事なので女性を採用するのは難しい」(はつり・解体工事、埼玉県)といった声がある一方、
「まだまだ少数 だが、女性技術職の採用で労働環境が改善された。設備面なども女性に配慮していきたい」(木造建築工事、長野県)といった回答もあげています。

女性を登用して良かったことは

同調査によると、女性登用を進めている企業(「社内人材の登用を進めている」または「社外からの登用を進めている」のいずれかを回答した企業)の割合は、
全体が42.6%であるのに対し、建設業が35.1%と少なく、他産業よりも消極的であることがわかります。
そうしたなかでも、女性を登用して良かったこととしては、全体・建設業ともに「男女にかかわらず有能な人材を生かすことができた」がトップで突出しています。
各職場で、性別によらない人材評価をしていることがわかります。
続いて、「女性の労働観が変化してきた」が64.8%、「多様な働き方が促進された」が30.7%でした。
一方で「採用活動等で有利に働いた」は9.7%であり、「男性の労働観が変化してきた」も10.9% でした。
女性側には高い影響があったものの、男性側には今ひとつのようです。
帝国DB:特別企画 : 女性登用に対する企業の意識調査(2020 年)-6

国土交通省の行動計画について

国土交通省は、令和2年に「女性の定着促進に向けた建設産業行動計画」を策定しました。
建設業界全体を活性化させるため、『男女を問わず、誰もが働きやすい業界』とすることを目的に、 2014年から継続している取り組みです。
今回の計画は『建設業を女性に選ばれる産業にすること』と『入職した女性が働き続けられる業界にすること』を目指し、官民で目標を掲げて実現を目指します。

官民で掲げた目標と主な取り組み内容

働き続けられるための環境整備を進める
・「女性の入職者数に対する離職者数の割合」を、2024年までの間、前年度比で現象させる。

・意識改革として「イクボス宣言」や働き方改革の推進

・短時間勤務やフレックスタイム制を取り入れる

・復職支援等の労働環境の整備などに取り組む

・スキルアップできる環境を整える…など

女性に選ばれる建設産業を目指す
・「入職者に占める女性の割合」を2024年までの間、前年度比で増加させる。

・教育現場と連携したイメージ戦略やPR活動に取り組む

・企業内の女性定着の成功事例や、女性が活躍している仕事例の発信

・『えるぼし』、『くるみん』の認定取得推進など

参考:国土交通省|女性の定着促進に向けた建設産業行動計画 より抜粋
このほか、建設産業で働く女性を応援する取り組みを全国に根付かせるという目標もあります。

参考URL:国土交通省|建設産業における女性の定着促進に向けた取組について

まとめ

職業選択が多様化してきた最近では、現場でも女性の姿を見かけるようになりました。今後も女性の入職を増やし、定着を図るためには、求職中に魅力をアピールすることや、入職後もフォロー しながらきちんと活躍できる場を作っていくことが大切です。

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