人材の需給と雇用

人材の需給と雇用

今回のWAT REPORTでは、厚生労働省による「労働経済動向調査(2020年7~9月期)」と「一般職業紹介状況(同8月)」、および国土交通省「建設労働需給調査結果(同9月10日~20日)」と、総務省による「労働力調査(同8月分)」をもとに、今年度の夏~秋にかけての建設業の人材需給状況と労働力についてまとめました。

東京オリンピック・パラリンピック関連の建設ラッシュが落ち着いたのちも、人手不足は継続していましたが、今年の夏以降は新型コロナウイルス感染症の影響もあってか需要が落ち着き、人手不足感は少しづつ緩和しています。非正規雇用の人数もこの8月で前年同期と並んだほか、技術者数も3カ月連続で前年同月比増加しました。

建設業における労働力の過不足感

厚生労働省による「労働経済動向調査」では、四半期ごとに正社員等労働者の過不足判断D.I.を公表しています。(注:労働者過不足判断D.Iとは、労働者数について、調査日現在の状況で「不足(やや不足、大いに不足)」と回答した事業所の割合から、「過剰(やや過剰、大いに過剰)」と答えた事業所の割合を差し引いた値)。

1正社員等労働者過不足判断 D.I.

8月の全産業においては、人手不足の回答が29ポイント、過剰の回答が8ポイントで、過不足判断D.Iは21ポイントの不足超過となりました。
建設業では、不足が41ポイント、過剰が2ポイントと全産業の平均に比べて不足感が1割ほど高く、過不足判断D.Iは39ポイントで、他産業と比較すると、不足感が強いことがわかります。
一方で過去1年間の推移を見ると、不足感は減少しています。

2産業別正社員等労働者不足状況と労働者過不足判断 D.I.

職人の職種別・地域別過不足感は

国土交通省の「建設労働需給調査」(2020年8月10日~20日の間の1日を調査対象日として集計)によると、8月時点で、不足率がマイナス(人員過剰の事業所の方が多い)職種はなく、どの職種も同じ程度の不足率を示しました。
前年の9月には、鉄筋工(土木)3.9%、型わく工(建築)の2.0%など、各職種の技能労働者が現在よりも不足していましたが、今年に入り改善傾向が見られます。
不足率の推移としては、緩やかな減少で、8月からは多くの職種が1.0%未満の不足率まで減少しました。8月時点においては型枠工(土木)と配管工の不足率が1.3%と最も大きく、続いて鉄筋工(土木)が1.0%の不足率でした。
また、左官は時期によって過剰と不足の落差が大きく、鉄筋工(建築)はやや過剰ぎみで推移しています。

3建築技能労働者過不足率の推移-グラフ

4職種別

地域別

今年の夏の人手不足感は、昨年の夏ほどではなかったことが読み取れます。
前年は、前々年よりも改善したものの、北陸・関東・東北・北海道の不足率が高い傾向でした。
地域別に詳しく見ると、東北地方の技能労働者の過不足率が3.2%と特に高く、被災3県の平均よりも全体の方が高かったことから、震災関連需要ではなく、地域的に技能労働者が不足していると捉えることができます。
北海道・四国でも、人手不足の傾向はあり、関東では前月よりも不足を感じている事業所が微増しました。中国・四国・九州と沖縄はやや過剰ぎみで推移しています。

5地域別

建設業の仕事の求人倍率

厚生労働省の「一般職業紹介状況」によると、職業安定所における建設・採掘の仕事の求人は、有効求人が10万9,216件(前年同月比0.6%減)に対し、有効求職が20,403件(同6.5%増)でした。有効求人倍率は5.53倍と高水準でした。

6職業安定所における建設・採掘の仕事の求人 

また、職業安定所における建築・土木・測量技術者の求人は、有効求人が5万5,763件(前年同月比5.4%減)に対し、有効求職が9,635件、紹介件数は2,887件で、有効求人倍率は5.78倍でした。

7職業安定所における建築・土木・測量技術者の求人

建設業の人数(雇用の種類別と技術者)

「労働力調査」によると、建設業の労働者数は、新型コロナの影響などで若干の落ち込みはあったものの、非正規を除いて増加傾向でした。前年同月比ではやや下回る結果でした。

就業者数は全体で497万人となり、3カ月連続で増加しました。前年同月比では、5カ月連続で前年を下回りました。

8建設業の就業者数-グラフ

このうち雇用者数(就業者のうち雇用されて賃金を得ているもの)は399万人で、5カ月連続で前年同期比減となる95.7%となりました。就業者全体の傾向と比べても、前年同期比でより減少しました。

9建設業の雇用者数-グラフ

非正規の職員・従業員数は56万人でした。
2019年10月以降、前年よりも高い水準で推移していましたが、20年から減少し、4月と6月には前年同月比約1割の減少となりました。6月からは再び増加し、8月には例年並みとなっています。

10非正規の職員・従業員数

建設技術者は、5月に前年同期比88.2%減となる30万人となったものの、6月以降は増加し、8月には35万人となりました。前年同月比は106.1%と3カ月連続で前年を上回り、技術者が増加していることを示しています

11建設技術者の推移-グラフ

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