雇用・人材

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今回のWAT REPORTでは、厚生労働省「毎月勤労統計(令和2年)」、「一般職業紹介状況(令和3年2月)」、国土交通省「建設労働需給調査(令和3年2月)」をもとに、建設業界の雇用・人材関連のデータを解説していきます。

直近の建設業の出勤日数は減少、土日閉所の成果は現れている

若者が休日数と福利厚生を見て仕事を選ぶようになった近年、建設業でも土日閉所運動が盛んです。
国土交通省が発注する直轄工事においては、2020年度から全ての工事で週休2日制が義務付けられました。本気の証として、同省は工期が延びる分の補正係数を上乗せした数字で予算を立てています。元請け団体である日本建設業連合会(日建連)も追随する形で、2021年度末をめどに4週8閉所を定着させるとしました。

では、実際に建設業の出勤日数は減少しているのでしょうか。

厚生労働省の「毎月勤労統計」は、大幅に中央値から外れる標本を取り除いた上で、全国の5~29人規模の事業所と、30人以上の事業所から標本を抽出し、毎月末の調査で定点観測をしています。

①-2 建設業の出勤日数の推移

厚生労働省|毎月勤労統計調査(全国調査・地方調査):結果の概要 及び
厚生労働省|毎月勤労統計調査(全国調査・地方調査):過去の結果の概要 を基に作成

これによると、建設業における平均出勤日数は2018年以降減少しています。過去14年間は、ほぼ21日付近で推移していたのに対し、18年から20年で1日近く短縮しており、土日閉所運動や働き方改革の成果はあったと見てよいでしょう。

わが国では労働時間が長く、生産性が低いことが長らく問題視されており、産業界全体に対し、働き方改革の一環としての休暇取得が奨励されています。そのため、調査産業計においては、2007年度に19日以上だった出勤日数が、20年には17日台まで短縮され、特に18年からは減少ペースが加速しました。
比べると、2020年の時点で建設業の出勤日数は産業全体と比較して2.5日、製造業と比較しても1.5日ほど多いという結果になり、いまだ「出勤日数の多い業界」ではあります。

労働時間も見てみましょう。
「毎月勤労統計」から建設業の労働時間も18年から減少し、20年には170時間となりました。製造業はさらに減少の度合いが大きく、過去2年で10時間ほど減りました。

①-1 建設業の労働時間の推移

参考|厚生労働省 毎月勤労統計調査(全国調査・地方調査):結果の概要 及び
参考|厚生労働省 毎月勤労統計調査(全国調査・地方調査):過去の結果の概要 を基に作成

 

ただし、新型コロナウイルス感染症の影響により、業務量が大きく落ち込み、労働時間が減少した業界・職種もあるため、来年の結果にも注目する必要があります。

コロナ禍で建設業の求人倍率はどうなる?

技術者・技能者の求人関連指標の推移

コロナ禍で景況は悪化していますが、事業者ごとに影響の度合いは違います。
大手ゼネコンには手持ち工事高に余力があるとはいえ、直近の景況感に左右される小規模工事を請け負うことが多い小・零細業者の中には、そろそろ経営が立ち行かなくなってきたケースも増えています。
こうした動向を踏まえ、建設業界における現場技術者求人動向について、厚生労働省による「一般職業紹介状況」から追ってみましょう。

②-1 建設・土木・測量技術者(求職者数・求人倍率)

参考|厚生労働省 「職業安定業務統計」 より作成

「一般職業紹介状況」では、ハローワークで扱った、求人、求職、就職の状況を毎月取りまとめて公表しています。

これによれば、建設・土木・測量技術者(エンジニア)の新規求人倍率は、依然として高水準です。緊急事態宣言が発令された2020年5月以降に、前年比でやや弱含んだものの、景況よりも人手不足が勝ったためか、12月には10.0倍を超え、それ以降も前年を上回る、超売り手市場となりました。

求職者側では、新規求職者数が年後半には前年より多くなり、相対的に有効求人倍率は下がりました。
一方、建築・採掘の職業の新規求人倍率も、近い動きを示しており、8月には前年を上回り、9月には8.0倍以上となる、こちらも超売り手市場となりました。求職者側では、新規求職申込数がほぼ前年並みの推移であり、大きな増減はありませんでした。

②-2 建築・採掘の職業(求職者数・求人倍率)

参考|厚生労働省 「職業安定業務統計」 より作成

技能者の中では配管工の不足感が強い

工程管理には十分な数の職人が不可欠です。しかし、昨今では職人不足が続いており、人手を集めるために日給をあげたために人件費が高騰するなどの弊害が起きています。
いわゆる職人と呼ばれる技能労働者の需給状況については、国交省の「建設労働需給調査(令和3年2月)」で、毎月データが集められています。
調査対象は、資本金300万円以上の建設業法人のうち、約3,000社が対象となっています。

まず、それぞれの専門職が、現場においてどれほど不足・充足感があるのかを見てみましょう。
「職種別の過不足率」(表の見方はプラスが不足、マイナスが充足)を見ると、2021年2月に置いて、職人は全体に不足気味であるものの、1コンマ以下に収まっていることから、1月に続き2月も、強い不足感はなかったようです。細かく見ると、配管工が1.1%と不足感が強く、電工も0.7%で比較的強いことがわかりますが、全体的に職人の不足感は減っています。

➂-1 職種別の過不足率

引用|国土交通省 「建設労働需給調査結果(令和3年3月調査)記者発表資料」

2月の翌々月、翌々々月(4、5月)における職人確保の見通しに関しては、過不足率の良化もあってか、前年の同じ月で実施した調査よりも「普通(69.3%)」「やや容易(5.7%)」が増えました。
ただ、「困難(9.4%)」も1割近くにのぼり、約3,000社の調査対象のうち300社ほどについては、職人の確保に強い困難があると予測しているため、法人によって状況に差があることがわかります。

➂-2 今後の労働者の確保に対する見通し

引用|国土交通省 「建設労働需給調査結果(令和3年3月調査)記者発表資料」

翌々々月の5月における労働者確保の見通しについては、労働者の確保を「困難」と予想する法人が16.8%(2.4%減)となり、不足状態は徐々に収束するとの見方があるようです。

まとめ

施工管理を大きく狂わせる要因の一つが、人手不足です。東日本大震災以降、建設業界では人手不足が慢性化していましたが、最近になって過不足率が0に近づくなど、緩和の兆しも見えています。
ただし、これは五輪関連の建設工事がひと段落したことに加え、新型コロナによる施工計画の停滞も影響しているためとも考えられます。バブル世代の大量退職により、深刻な人手不足になることも予想でき、予断を許さない状況だと言えます。

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