建設業および大手ゼネコン50社の受注高(2021年4~6月)

今回のWAT REPORTでは、2021年4~6月の建設業および大手ゼネコン50社の受注高と工事の発注先等に関して、国土交通省の「建設工事受注動態統計調査(21年4~6月)」をもとに、建設業界における受注動向をレポートします。

概要

国土交通省の「建設工事受注動態統計調査」では、前々年度の完成工事高が1億円以上の業者のうち、1万2,000業者を抽出し、返送された調査票をもとに、月々の受注高や工事に関するデータを取りまとめています。
なお、2021年4月より、調査の推計方法に変更がありました。未回答の建設許可業者の欠損値について、行政記録情報(経営事項審査)を活用して補完した後、経済センサスとの照合結果を踏まえたウェイトの調整により補完し、母集団の推定値を算出しています。大手ゼネコン50社の受注高については、業者を有意に抽出しているため、無関係です。2020年1月まで遡って補完された数字も公表されており、このレポートでは2021年の受注高と前年同期比が新データ、2020年の受注高は旧データになります。

低水準だった前年から回復した2021年度4~6月

国内建設業の受注高は、2015年以降、景気の拡大や首都圏の再開発、東日本大震災の復興事業などで拡大してきました。しかし、2020年度(2020年4月~21年3月)には新型コロナウイルスの影響とみられる工事発注の減少が相次ぐ等で減速し、受注高総計は79兆5,987億円(前年同期比3.4%減)に落ち込みました。80兆円を割り込んだのは6年振りでした。
しかし、今年に入ってからは市場が再び活性化し、2021年度の4月は9兆4,055億円(17.0%増)、5月は8兆0,006億円(17.3%増)、6月は9兆5,988億円(12.1%増)と、低調だった前年からの回復が見て取れます。

土木、建築・建築設備、機械設置等工事いずれも回復

第1四半期までの受注高と増減率
参考|国土交通省「建設工事受注動態統計調査
工事種類別に前年同期との増減率をみると、青い線で表している土木工事の受注額は、4月に63.7%の大幅な増加となりました。増加基調に加え、公共機関からの大型発注が寄与しました。グレーの線の機械設置等工事は前年4月の大幅増が影響し、反動減となりました。5月には土木工事、建築工事・建築設備工事、機械装置等工事の各工事種とも、受注高が前年同期から二桁増となり、6月もすべての工事種で好調でした。
受注高の増減率参考|国土交通省「建設工事受注動態統計調査

4~6月の受注総額は15.3%増加、土木・建築設備工事が2桁増

2021年度第1四半期の受注高を、過去2年間と比較すると、前年同期から15.3%増え、27兆0,050億円、内訳では「土木工事」が28.4%増の8兆8,196億円、「建築・設備工事」は13.7%増の15兆7,613億円で、どちらも前年から増加に転じました。「機械装置等設置工事」が9.9%減の2兆4,239億円でした。
一方、元請け受注高も前年同期から14.0%増加し、16兆5,694億円となりました。「公共機関」は10.7%増の5兆1,472億円、「民間」は15.5%増の11兆4,221億円で、特に民間の伸びがめざましく、市場の回復をけん引していくと見られます。
過去3年の4-6月期との比較1
過去3年の4-6月期との比較2参考|国土交通省「建設工事受注動態統計調査

※この表の2021年の受注高は、新しい推計方法によって算出された2020年のデータと比較されているため、´のない20年・21年の受注高には連続性がありません。

大手ゼネコン50社の受注高は明らかに減少局面

大手ゼネコン50社の受注高総計
参考|国土交通省「建設工事受注動態統計調査

大手ゼネコン50社の受注高総計は、2019年にピークに達しましたが、2020年度には減少に転じ、直近でも、6か月連続で前年同期マイナスとなりました。都心の再開発で大型案件が減少していることに加え、コロナ禍の影響を受けて市況が悪化している等、市況は厳しさを増しています。4月には3.2%減の7,252.2億円、5月には6.9%減の7470.0億円と微減の範囲でしたが、6月には24.4%減の1兆3,631億円と、受注減が明確になりました。

ゼネコンの受注量は減少しても、未消化工事は積みあがっている

大手ゼネコンの手持ち工事月数参考|国土交通省「建設工事受注動態統計調査

最後に、大手ゼネコンがすでに受注した工事が、どれだけ未着手で残っているかを見てみます。工事量を消化にかかる月数で表現した「手持ち工事月数」によれば、2020年8月以降、14カ月分だった手持ち工事量はゆるやかに増加し、2021年3月には17カ月分まで積み上がりました。工事の受注量は減少していても、手持ち工事量は豊富であることから、今すぐに大幅な値崩れや過当競争が起きるとは考えづらいと言えます。

■まとめ
首都圏では、五輪イヤーを見据えた「五輪バブル」がピークアウトを迎え、徐々に工事量が落ち着きつつあります。
特に、開発がひと段落したことから、採算性の高い大型案件が少なくなっているため、ゼネコンにおいては、受注競争の激化も懸念されます。
建設関係企業は受注量の確保にとどまらず、利益率の向上にも取り組む必要があり、そのためにも生産性向上が重要なテーマとなっていくでしょう。

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