建設業および大手ゼネコン50社の受注高(2021年1~3月)

今回のWATREPORTでは、新型コロナウイルス感染症拡大が、民間企業の建設設備投資計画にどのように影響を与えたかについて、(一般財産法人)建設物価調査会「民間企業設備投資動向(21年3月)」から検証します。
また、2021年1~3月の建設業および大手ゼネコン50社の受注高と工事の発注先等に関して、国土交通省の「建設工事受注動態統計調査(21年1~3月)」をもとにレポートします。

新型コロナウイルス禍で投資計画の見直しはどれほど起きたか

わが国において新型コロナウイルス感染症はいまだ拡大しており、飲食業界や旅行業界などの窮状がクローズアップされています。建設業はこうした影響をどれほど受けているのでしょうか。
将来の売上高を左右する民間企業の建設設備投資計画について、(一般財産法人)建設物価調査会が2021年5月10日に実施した「民間企業設備投資動向(21年3月調査)」から読み解きます。

「民間企業設備投資動向調査」では、すべての産業の資本金1億円以上の国内民間企業(4,451社)に郵送または電子調査によるアンケートを行い、1,136社(25.5%)から回答を得ました。

②-1 新型コロナの建設投資計画への影響参考:⼀般財団法⼈ 建設物価調査会|【確報】⺠間企業設備投資動向調査 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による国内建設投資計画及び機械設備投資計画への影響 アンケート調査結果(2021 年 3 ⽉調査)

これによると、新型コロナが建設投資計画に影響を与えたと答えた企業は10.1%にあたる114社であり、比較的影響は小さかったもともと調査時点で「不明・未定」「未回答」「回答拒否」が256社(22.6%)あったため、実際はこれよりも多くの企業で設備投資計画に変更があった可能性もあると考えられます。「前倒しになった」と答えた会社も少数ありました。

②-2 建設投資計画における新型コロナの影響の推移参考:⼀般財団法⼈ 建設物価調査会|【確報】⺠間企業設備投資動向調査 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による国内建設投資計画及び機械設備投資計画への影響 アンケート調査結果(2021 年 3 ⽉調査)

一方、「不明・未定」「未回答」「回答拒否」を除いた割合を調べた結果を見てみると、緊急事態宣言が出ていない段階ですでに51社が建設投資計画を後ろ倒しにする判断をしていたことがわかります。
後ろ倒しを決めた会社は、その後127社(17.5%)となり、年末まで同程度の水準が続きますが、2021年3月には減少、回復の兆しが見えています。

②-3 建設投資計画が後ろ倒しになった理由参考:⼀般財団法⼈ 建設物価調査会|【確報】⺠間企業設備投資動向調査 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による国内建設投資計画及び機械設備投資計画への影響 アンケート調査結果(2021 年 3 ⽉調査)

後ろ倒しになった理由(2021年3月時点/複数回答可)としては、「市場の先行き不透明のため」「自社のキャッシュフロー確保のため」が多く、市場のマイナス変化を警戒しての引き締めが起きていたことがわかります。実際のマイナス変化が理由である企業(「外注先活動縮小・自粛のため」等)はむしろ少数派で、計画後ろ倒しの理由は、多くの企業がコロナ禍で守りの態勢に入ったせいであると言えます。

建設業の受注高推移は1、2、3月とも前年と同水準

続いて、建設業全体の受注高の推移について、過去2年分の推移のグラフから、2021年1月~3月の官・民合わせた受注高の動きを読み解きます。

国土交通省の「建設工事受注動態統計調査」は、前々年度の完成工事高が1億円以上の業者から1万2,000業者を抽出し、行政に提出した調査票をもとに、月々の受注高や受注した工事に関するデータを取りまとめています。
この調査によると、2021年1月~3月の工事受注総額は前年と同程度の水準で推移しました。

③-1 建設業の受注高の推移(工事種別)
参考:国土交通省|建設工事受注動態統計調査報告/kakuho2103.pdf

月別では、1月には前年同月比1.4%増の5兆3,542億円で、4ヶ月連続の減少から増加に転じました。2月は5兆9,436億円、3月は10兆7,062億円で、1.0%増となり、再び前年同月比増となりました。
2月のみは前年同期比が減少していますが、実際には、前年同期に過去8年で最大となる1兆2,020億円の公共受注があったことから、単なる反動減であると言えます。

③-2 元請受注高の推移(官民別)
参考:国土交通省|建設工事受注動態統計調査報告/kakuho2103.pdf

公共機関・民間別の受注金額を見ると、公共機関は1月が前年同月比25.6%増の1兆1,602億円、2月のみ2.0%減の1兆81,782億円でしたが、3月は7.1%増の2兆8,069億円。
公共工事は前年同期よりも受注量が多く、需要を下支えしていることがわかります。

民間工事は1月が同0.1%増の2兆4427億円、2月が2.9%減の2兆8,420億円、3月が0.6%増の5兆3,476億円と、ほぼ前年並みの受注額で、落ち込んだ印象はありません。

大手ゼネコン50社の受注総額は増加傾向、公共工事が大幅増

さらに、大手ゼネコン50社の受注総額を過去4年分さかのぼってグラフ化し、2021年1~3月の受注高総額を見てみます。
大手ゼネコン50社とは「建設工事受注動態統計調査」において、年間完成工事高が比較的大きいと判断される建設業者の中から、有為に事業者を抽出し、調査した結果です。①-1 大手ゼネコン50社の受注総額
参考:国土交通省|令和3年3月の建設工事受注動態統計調査(大手50社調査)結果/db01-50社2021.03.pdfなど、各年の3月分の記者発表資料

直近の2021年(2020年度)3月期決算では、スーパーゼネコン4社をはじめ、多くの大手ゼネコンが減収・減益となり、五輪、大型再開発が一巡したのちの民間の投資停滞を危ぶむ声もありましたが、受注総額の面では、直近の21年1~3月の動きを見ると、3カ月連続で前年を上回っています。今回の調査結果を見るかぎり、新型コロナウイルスの影響は部分的にあるとはいえ、大手の工事受注総額に大きな影響はないと言えます。ただ、先行きを見越して受注量確保を優先している可能性は考えられます。

受注総額の推移は3カ月連続で増加の動きを示しており、1月に1兆0,502億円(14.1%増)、2月に1兆2,435億円(2.5%増)、3月に3兆6,395億円(12.5%増)でした。

発注者別に見ると、公共機関からの受注は、1月の公共工事が3,886億円(前年同月比66.7%増)、2月は3,293億円(同7.1%増)、3月は8,640億円(同26.9%増)と、13カ月連続で同じく増加。
民間工事は1月に6,174億円(前年同月比4.8%増)、2月は8,190億円(同0.1%減)、3月は6,029億円(同14.2%)と、2月に微減したものの、やはり増加傾向を示しています。

大手ゼネコンの海外受注はコロナ禍で振るわず

一方、新型コロナに水を差されたのが海外受注でした。近年では、東南アジアを中心に海外展開に力を入れていたゼネコンが多く、足止めを食らった形です。
参考:国土交通省|令和3年3月の建設工事受注動態統計調査(大手50社調査)結果/db01-50社2021.03.pdfなど、各年の3月分の記者発表資料

2020年の海外工事受注は、4月以降ふるわず、10月にはマイナスに転落しました。
21年になると2月に一旦増加しますが、3月には再び減少に転じました。
東南アジアでは新たな変異株が猛威を振るっていることもあり、いまだ海外受注の先行きは不透明です。

大手ゼネコン50社・手持ち工事高は上向くも先行き不透明

最後に、大手ゼネコンの50社の施工高と手持ち工事高の動きを、過去4年にさかのぼってグラフ化したものを見ていきます。
手持ち工事高は企業が過去に受注した工事のうち、手元で積み上がっているものであり、施工高は契約済みの工事のうち、着工して完了した部分の金額を表します。
大手ゼネコンの手持ち工事高(黄緑色の棒グラフ)を見ると、2019年まで前年同期比で増加していましたが、20年の3月に前年を下回り、10カ月連続で減少しました。
21年の1、2月で再び増加に転じたものの、全体としては緩やかに減少しています。

①-2_大手ゼネコン50社の受注総額
参考:国土交通省|令和3年3月の建設工事受注動態統計調査(大手50社調査)結果/db01-50社2021.03.pdfなど、各年の3月分の記者発表資料

また、施工高(深緑色の棒グラフ)も2019年2月をピークに、前年同期比のパーセンテージが減少しており、今後の実績は先行する受注高次第と言えます。

まとめ

新型コロナウイルス感染症の経済への影響は深刻で、産業界はなるべく設備投資を控え、体力を温存する姿勢がうかがえます。
ゼネコンを始めとする建設業界では、受注確保の姿勢を強めていますが、価格競争の激化による経営環境の悪化が懸念されます。

 

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