2020年の建設工事の受注動態

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今回のWAT REPORTでは、国土交通省による「建築着工統計調査」および「建設工事受注動態統計調査」のデータを取りまとめて、2020年の建設業界の受注動態についてレポートしています。

2020年の設備投資は弱い動き、着工床面積は1割減

2020年には、新型コロナウイルス感染症の影響で景気が悪化しました。内閣府の「月例経済報告」でも、2020年2月以降の景気の基調判断は依然として厳しい状況だとしており、消費の内容によっては持ち直しの動きも見られるものの、設備関係の投資意欲は弱含んでいます。
国土交通省が発表した「建築着工統計調査」によれば、住宅・非住宅を含む着工床面積は4年連続で減少し、2020年には1億1,374万4,000平方メートル(前年比10.8%減)、約1,000万平方メートル減となりました。これは、リーマンショック時以来の低水準となります。
民間非住宅建築の着工床面積は、3,969万平方メートル(前年比8.9%減)で、2年連続の減少、住宅は6,868万平方メートル(前年比12.0%減)で、昨年の増加から減少に転じました。

①-1 着工床面積の変化

参考|国土交通省「建築着工統計調査報告 時系列一覧」を基に作成

一般財団法人建設経済研究所は、「建設経済モデルによる建設投資の見通し」の中で、2021年度の民間非住宅建築投資を前年度比3.4%増加すると見通しています。

物流施設の建設ラッシュで倉庫の着工床面積が前年比約25%増加

2020年には貨物の流通量が増加し、物流倉庫をはじめ関連施設が相次いで建設されました。
非住宅建築物の着工床面積を比較すると、倉庫が最も多く、1,145万平方メートル(前年比26.1%増)で、工事費予定額も1兆5,094億円(同25.6%増)と大幅に上昇しました。
事務所の着工床面積は617万平方メートルで、前年比3.7%減でした。店舗の着工物件数は5,076件で、前年比23.3%減少しました。着工床面積も減少しましたが、1件あたりの単価が上昇し、工事費予定額は4.2%増加しました。

①-2 建築物の種類別 着工床面積

参考|国土交通省「建築着工統計調査報告 時系列一覧」を基に作成

2020年の建設工事の受注高は79兆円

新型コロナウイルスの感染防止対策に追われた2020年、市場の意欲を示す建設工事の受注額は、79.7兆円で着地しました。前年の実績を7.0%下回るとはいえ、コロナ禍においては堅調な推移であり、公共事業費の削減とリーマンショックが相次いだ2000年代前半とは大きく異なる状況だと言えます。

②-1 建設工事の受注高

参考|国土交通省「建設工事受注動態統計調査」を基に作成

民間からの受注は1割減、公共機関からの受注は防災・減災工事で今後も安定

工事種別に見ると、土木工事の受注額は前年比で微増し、堅調に推移しました。建築工事・建築設備工事は減少、機械装置等工事は微減しましたが、ほぼ前年並みの水準を維持しました。
受注額を民間・公共機関からの発注に分けると、公共機関からの受注は前年比5.7%増の17.5兆円と増加しています。
民間からの受注は36.3兆円で、対前年比11.6%の減少、特に受注高全体に占める割合の高い建築工事・建築設備工事が14.5%減少し、実績に響きました。

②-6 受注高 前年比

参考|国土交通省「建設工事受注動態統計調査」を基に作成

②-7 受注高 前年比

参考|国土交通省「建設工事受注動態統計調査」を基に作成

過去3年間の受注高推移を工事種別に詳しくみると、建築工事・建築設備工事については、受注額が増加から減少に転じ、1割強が失われました。これは、建築・建築設備工事は民間からの発注が多いため、新型コロナによる景気の悪化にあおりを受けたためと考えられます。

②-4 建築工事・建築設備工事の受注高

参考|国土交通省「建設工事受注動態統計調査」を基に作成

一方、政府の防災計画などで安定的な支出がある土木工事については、前年比で微増しました。国土強靭化にかかる防災・減災の5カ年計画が2020年末に閣議決定されたことを踏まえると、今後5年はインフラ工事などで一定量の受注は確保できると考えられます。

②-3 土木工事の受注高

参考|国土交通省「建設工事受注動態統計調査」を基に作成

機械装置等工事の受注は、民間からの発注が前年比6.9%減少したものの、官公庁からの受注が増加したため、ほぼ前年と同水準で落ち着きました。

②-5 機械装置等工事の受注高

参考|国土交通省「建設工事受注動態統計調査」を基に作成

 

まとめ

全体を通してみると、2020年の建設工事の受注は、前年に引き続き堅調に推移し、コロナ禍による経済悪化の影響は、比較的少なかったと見ることができます。
もともと、東京オリンピック・パラリンピックに向けた大型の建設工事が一巡し、端境期であったことから、民間の建築工事は発注が沈静化していました。今後、大都市圏の再開発や自然エネルギー関係で発注が増加すれば、2021年の受注額は再び増加に転じる可能性もあります。

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