建設業界主要企業の2022年3月期第1四半期決算(2021年4~6月)

今回のWAT REPORTでは、総合工事業(ゼネコン)大手・準大手・中堅の合計22社、および管工事、電気工事、通信工事サブコン、エンジニアリング専業、ユーザー系プラントエンジニアリングの主要各社における2022年3月期(2021年度)決算について、決算短信や決算説明会資料に基づきまとめました。

概要
国内では華やか東京五輪の開催とは裏腹に、新型コロナウイルスの流行による経済活動の停滞が続き、投資意欲の減退が懸念されます。一方で、物流施設やデータセンター、通信設備等、新たな建設需要の取り込みや、建物のPDCAサイクルを担うという新たな形態を踏まえた工事の発注が期待されています。
海外事業では新型コロナウイルスの流行による影響が長期化している影響で、国ごとに状況は異なるものの、各社ともに慎重な対応を強いられています。

ゼネコン大手4社の2022年3月期第1四半期決算

ゼネコン大手の2022年3月期第1四半期は、4社そろって減益となる厳しい決算でした。どの社も売上高は微増しており、受注高の減少はないものの、営業利益・純利益は大幅減となりました。
各社の工事の進行状況で利益を計上する時期が違ってくるため、今後、工事の進捗に伴って各社の利益が改善する可能性は十分にあります。しかし、2020年の五輪イヤーに向けた再開開発案件が竣工し、東日本大震災の復興事業もひと段落しているという状況下で、関東エリアの工事の受注競争が激しくなってきていることは間違いなく、減益要因の一つになっていると考えられます。
4社とも業績予想は据え置きましたが、売上高はプラスになる一方、利益面については2ケタ台の減少を予想しました。新型コロナウイルスの感染拡大により、設備投資の低迷も見られることから、今後、首都圏を中心に、大手・準大手・中堅ゼネコンを交えた受注競争が激しさを増すものと見られます。
大手ゼネコン前年同期比
大手ゼネコン 業績予想

準大手ゼネコン9社の2022年3月期第1四半期決算

準大手ゼネコンでは、五洋建設、前田建設工業、三井住友建設、熊谷組の4社が減収減益となり、長谷工コーポレーションと戸田建設の2社は増収増益でした。西松建設は減収増益、東急建設は増収したものの、利益面が赤字となりました。業績予想は各社とも据え置きました。
準大手ゼネコン 前年同期比
準大手ゼネコン 業績予想

中堅ゼネコン9社の2022年3月期第1四半期決算

中堅ゼネコンでは、奥村組と東亜建設工業、飛島建設の3社が増収増益、鉄建建設、東洋建設、錢高組、東鉄工業の4社が減収減益となりました。淺沼組は増収減益、大豊建設は営業利益のみプラスでした。業績予想では、奥村組が第2四半期の予想を上方修正しました。建築事業の売上高が30億円ほど増加すると見通しています。
中堅ゼネコン 前年同期比
中堅ゼネコン 業績予想

管工事サブコン10社の2022年3月期第1四半期決算

管工事サブコンでは、高砂熱学工業、三機工業、朝日工業社、大成温調の4社の純利益がマイナスの厳しい決算となりました。新型コロナウイルスの流行により、オフィス空調を中心に投資計画が先送りされたことに加え、景気の悪化で小型工事の受注が減っていることから、短工期案件が少なくなり、利益面が目減りしました。
一方、物流施設やデータセンター、都内の再開発案件の需要もあることから、長期的には売り上げは底堅いものがあると見られます。業績予想は全社が据え置きました。
管工事サブコン 前年同期比
管工事サブコン 業績予想

電気工事サブコン8社の2022年3月期第1四半期決算

電気工事サブコンは、ユアテック、日本電設工業、中電工の純利益がマイナスで、きんでん、トーエネックも減益しました。九電工は、営業利益率が改善し、増益となりました。
景気の悪化による設備投資の縮小で、屋内電気工事等の減少が目立ちましたが、情報通信関連では増収した会社が多くありました。
業績予想では、ほとんどの会社が据え置きとしたところ、中電工は大型工事の進捗遅れや屋内電気工事の減少等の理由で減収減益の方向に業績予想を修正しました。
電気工事 前年同期比
電気工事 業績予想

通信工事サブコン3社の2022年3月期第1四半期決算

情報通信設備工事業の3社は大幅な増収増益と受注増を達成しました。新型コロナウイルス感染拡大をきっかけにテレワークやDXが普及し、通信工事の受注が好調だったことに加え、光ファイバーや5G(第5世代移動通信システム)基地局の設置等、通信インフラ整備事業も好調でした。3社とも業績予想の変更はありませんでした。
通信工事 前年同期比
通信工事 業績予想

エンジニアリング専業3社の2022年3月期第1四半期決算

エンジニアリング専業3社の第1四半期は、厳しい決算でした。日揮は豪州LNGプロジェクト関連で594億円の特別損失を計上、これに伴い通期の業績予想も下方修正しました。千代田化工も米LNGプロジェクトの特別損失204億を計上し、純利益がマイナスになりました。東洋エンジニアリングは海外プロジェクトの進捗で売上高が増加しました。
各社とも海外案件が多く、新型コロナウイルスの流行による情勢不安も相まって、先行きは不透明といえます。他方で、SDGsの取り組みの活発化で、CO2削減に役立つ環境・新エネルギー・インフラ関係の案件増加が見込まれており、洋上発電や再生可能エネルギーの設備投資等の受注にも注力すると見られます。
専業エンジ 前年同期比
専業エンジ 業績予想

ユーザー系プラントエンジの2022年3月期第1四半期決算

ユーザー系でプラントエンジを手掛けるレイズネクストの第1四半期決算は、増収減益となりました。メンテナンスの売上げは、前年同期からの増減率で、56.5%増となった一方、エンジニアリングは7.7%減でした。前期は石油・石油化学関連の定期修理工事が多い年であったため、今期のメンテナンスの受注は8.0%減を見込みます。エンジニアリングは増加の予想で、受注高・完工高の拡大に努めるとし、業績予想は期初から据え置きました。
ユーザー系エンジ 前年同期比
ユーザー系エンジ 業績予想

まとめ

新型コロナウイルス感染症の世界的な流行は未だ収束しておらず、景気の低迷が続いています。ワクチン接種とともに経済活動の再開が期待されますが、先行きの見えない状況です。
多くの建設関係企業では、新型コロナの影響による工程遅れや発注量の減少により、民間建築部門で受注競争が激化し、利益確保が重要な課題となっています。一方で、公共機関からの受注では国土強靭化計画をはじめとする防災関連工事等が底堅く、業界を下支えする構図となっています。

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