建設業界主要企業の2022年3月期第2四半期決算(2021年7~9月期)

建設 決算

今回のWAT REPORTでは、総合工事業(ゼネコン)大手・準大手・中堅の合計22社、および管工事、電気工事、通信工事サブコン、エンジニアリング専業、ユーザー系プラントエンジニアリングの主要各社における2022年3月期(2021年度)決算について、決算短信や決算説明会資料に基づきまとめました。

概要

コロナ禍で停滞していた経済活動は回復しつつあるも、感染予防対策や石油・資材価格の高騰で工事のコストは増加傾向です。ゼネコンの受注競争も激しくなっており、準大手以下では減収も目立ちました。一方で、サブコンは一定の需要を背景に堅調に推移した業種も多く、通信工事業では5Gや通信回線整備などの新規需要が旺盛で、業績好調でした。

ゼネコン大手4社の2022年3月期第1四半期決算

ゼネコン大手(非上場の竹中工務店を除く)の連結業績は、民間建築を中心に4社とも業績が伸び悩み、本業のもうけを示す営業利益は、各社が前年同期比減益となりました。

減益の理由として、清水建設は「工事採算の低下や販売費・一般管理費の増加」、大成建設は「国内の競争環境の悪化により」大林組は「国内の大規模工事複数件において、工事損失引当金を計上した」と決算説明資料で述べています。一方、当期純利益において落ち込みが少なかった鹿島建設は、「国内で一定の利益率水準を維持した上で、海外開発事業が業績に大きく貢献した」と公表しました。売上高は4社とも前年と同水準を確保しました。
1.大手ゼネコン
通期業績予想は、2社が修正しました。大林組は、資材価格高騰のあおりを受けたことに加え、複数の大規模施設で採用を見越していたVE(バリュー・エンジニアリング)提案が不採用となり、今期損失を計上。当初予想から営業利益が7割減、当期純利益が半減するとして大幅な下方修正を行いました。鹿島建設は海外関係会社の業績が好調で、予想を上方修正しました。
2.大手ゼネコン_業績予想

準大手ゼネコン大手9社の2022年3月期第2四半期決算

準大手ゼネコンでは、9社中5社が前年同期比で減収となりました。減収の理由として安藤・間は「競争環境の厳しさ」、五洋建設は「東京五輪関係工事が一巡した」、熊谷組は「期首繰越高の減少により完成工事高が減少、また、前年が過去最高益であった反動」と説明しており、市場環境の変化が収益に反映されたと見られます。
一方、9社中2社は、当期純利益が前年同期を上回り、二桁台の増益となりました。長谷工コーポレーションは、得意とするマンション関連事業の売上が好調で、収入・利益ともに増加。西松建設は「土木・建築ともに利益率が向上した」と説明しています。
3.準大手ゼネコン
業績予想では、三井住友建設と東急建設の2社が、営業利益・経常利益・当期純利益ともに純損失になる見通しで、通期業績予想を下方修正しました。理由として、三井住友建設は「受注時期の遅れなどで売上が減少し、海外では新型コロナの影響があった。工事の採算が悪化し、利益が減少したこと」、東急建設は「工事の受注時期ずれや一部工事の進捗遅れで完工高が減少、7月に公表した基礎杭の不良にまつわる損失見込み額を計上したこと」などを挙げています。
4.準大手ゼネコン_業績予想

中堅ゼネコンの2022年3月期第2四半期決算

中堅ゼネコンの連結売上高は、9社中7社が前年同期を下回り、鉄建建設、錢高組、東鉄工業は2ケタ台の減少でした。準大手と同じく、背景には、民間建築工事の受注競争の激化や、資材費の高騰があると考えられます。一方で、奥村組・東亜建設工業は増収増益で、準大手並みの業績で年度を折り返しました。2社とも売上総利益率の改善が奏功し、大幅に業績を伸ばしました。
5.中堅ゼネコン
通期業績予想では、奥村組は収益ともに上方修正しました。土木・建築事業の売上高の増加に加え、土木の利益率改善が奏功したとしています。また、東鉄工業は、市場環境の変化に加え、建築の大型工事の進捗遅れにより、収益予想を下方修正しました。
6.中堅ゼネコン_業績予想

管工事サブコンの2022年3月期第2四半期決算

管工事サブコンは、10社中6社が増収、本業のもうけを示す営業利益は5社が増益しました。
大都市圏を中心とした大型再開発案件や産業空調が堅調に推移し、特にリニューアル・中小規模工事は回復基調となりました。多くが海外事業においては、新型コロナの流行に関連して市場環境の変化や労務・資機材費の高騰がコスト増につながり、採算の悪化要因になりました。
減益の理由として、高砂熱学工業は、海外子会社のコスト増や、国内外工事の進捗遅れ、大気社は海外事業の採算の悪化、ダイダンは利益率低下や大型工事の進捗が本格化せず、出来高が減少したこと等を挙げました。
7.管工事サブコン
連結の業績予想では、海外でのコロナ禍の影響など、事業環境の変化を踏まえた修正が目立ちました。大気社は、今期における大型物件の寄与が少なくなり、すべての項目を下方修正。そのほか、朝日工業社は売上高のみ前回比7.9%下方修正し、日比谷総合設備は、原価低減や施工の効率化で増益し、各利益を上方修正しました。
8.管工事サブコン_業績予想

電気工事サブコンの2022年3月期第2四半期決算

電気工事サブコンは、8社中4社が増収、営業利益は全ての会社で減益もしくは前年なみの業績でした。企業の電力設備投資は回復基調にあり、再生可能エネルギー関連工事も増加する見通しですが、直近の需要はコロナ禍前の水準までは戻っておらず、各社は利益水準の確保に注力しています。
大手を個別に見ると、関電工は調達機能の拡充や原価低減に注力し、前年なみの水準で今期を折り返しました(今年度から「収益認識に関する会計基準」を適用しており、売上高の比較ができなかった)。きんでんは、販売費・一般管理費の増加で営業利益が減少。九電工は不採算案件の減少と利益向上施策に取り組み増益。トーエネックは、屋内線工事などの一般得意先向けの売上が減少し、減収減益となりました。
なお、ユアテックはベトナムの大手設備エンジニアリング企業の完全子会社化にともない増収しました。収益拡大に向け、受注体制を強化します。
9.電気工事サブコン
連結業績予想の変更はありませんでした。
10.電気工事サブコン_業績予想

通信工事サブコンの2022年3月期第2四半期決算

通信工事サブコンの第2四半期決算は、全社で増収増益になりました。高速通信規格「5G」やコロナ禍によるデジタル活用の進展で通信工事の需要が増加。3社は、NTTグループの光ファイバ整備事業やドコモの5G基地局整備、NCC(ニューコモンキャリア/楽天、ソフトバンク、KDDIなど)の基地局建設工事において、受注・売上ともに大幅増となり、好調な決算となりました。デジタル庁の発足で、新たに行政システムのデジタル化投資も期待される(エクシオG)としています。
11.通信工事サブコン
連結業績予想では、ミライトホールディングスが前回予想比売上高2.1%増、営業利益4.9%増など、全ての項目を上方修正しました。「今後も5Gサービスの拡大や、オンライン授業・テレワークの浸透による通信設備増強、DX推進等に伴う新たな需要が見込まれる」としました。
12.通信工事サブコン_業績予想

エンジニアリング専業3社の2022年3月期第2四半期決算

エンジニアリング専業3社では、2社が増収、2社が営業増益となりました。新型コロナの影響で、国内・海外のプラント事業における設備投資の手控えが起きました。今年度からは計画再開の動きがありますが、設備投資動向は国や地域によりまちまちで、先行きは不透明です。
東洋エンジは、複数の国内向けバイオマス発電所やロシアの石油化学プラント、インドのプロジェクト進捗により、増収増益となりました。日揮HDと千代田化工は、米国プロジェクトの特損を計上し、最終純損失が153億2,700万円となりました。各社は、SDGsに準じた再生可能エネルギーの設備投資が見込まれることから、新たな成長分野の受注強化に力を入れるとしています。
13.エンジニアリング専業
連結の業績予想では、日揮HDが、営業利益を25.0%増、経常利益を26.3%増、当期純損失を460億円から420億円に上方修正しました。機能材製造事業の需要が回復したことに加え、進行中のプロジェクトで採算が良化したことが寄与しました。
14.エンジニアリング専業_業績予想

ユーザー系プラントエンジニアリング企業の第2四半期決算

ユーザー系プラントエンジニアリング企業のレイズネクストの第2四半期決算は、増収増益になりました。大型の定期修理工事での追加工事量が、採算性も向上しました。上期で大型の定期修理が一巡することから、下期以降、「メンテナンス分野では、日常保全やタンク関連工事の拡大に注力し、エンジニアリング分野では、一般化学や電子材料などの高機能製品製造プラントや再生可能エネルギー関連の工事の拡大に注力する」と公表しています。
15.ユーザー系プラントエンジニアリング企業
当初の想定を上回る業績で推移したため、通期の業績予想では、各営業利益を1割程度上方修正しました。
16.ユーザー系プラントエンジニアリング企業_業績予想

まとめ

今期は多くの業種で、前年同期と比較して売上・利益ともに減少した企業が多く、市場環境の変化を理由に業績予想を下方修正するケースも見られるなど、厳しい決算となりました。国内外の経済活動11月にアフリカで感染性の高い新型コロナの変異株が現れるなど、いまだ国内外では経済活動が制限されています。そのような状況で、土木工事については、公共工事価格にスライド条項が取り入れられたことで、安定した利益が見込まれており、底堅い需要に期待がかかります。

 

 

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