建設業の許可業者数

今回のWAT REPORTでは、国土交通省による「建設業許可業者数調査の結果についてー建設業許可業者の現況(令和3年3月末現在)ー」をもとに、今年度の建設業許可を取得した事業者数についてレポートします。

2020年3月末の建設業許可業者数は、1,479業者増えて47万2,473業者

建設業者として、500万円以上の規模の工事を請け負うには、元請け・下請け関係なく、建設業許可を取得する必要があります。国土交通省によると、2021年3月末の時点で、建設業許可を取得した業者数は、47万3,952業者(表中では四捨五入して47.4万)でした。前年から1479業者(0.3%)増加しています。

また、この1年間で廃業したのは1万8,391業者で、前年同月より70業者(0.5%)減少しました。内訳では、廃業の届出があったのが8316業者(前年同月より0.2%増)、手続きをせずに失効した業者が1万0,075業者(同5,620業者増)でした。

①-2 建設業許可業者数と新規業者数、廃業等業者数の推移参考|国土交通省「建設業許可業者数調査の結果について-建設業許可業者の現況(令和 3 年 3 月末現在)-

1994年に、許可の有効期限が5年に定められて以来、廃業者数(緑の折れ線グラフ)が多い年と少ない年が周期的に来るようになりました。21年3月は更新期を迎える業者が多い年であり、通常ならば廃業者が増えていたところ、今回は前年より0.5%減少しました。

なお、2020年10月に、改正建設業法で、建設業許可の継承制度がスタートしており、3月末までに203件に認可がおりています。今回の結果には、その数字も含まれます。

建設業許可の取得業者数は下げ止まった状態

建設業許可を取得した業者数は、2000年のピーク時には60万0,980業者でした。しかし、「コンクリートから人へ」に代表される国土政策の転換で投資額が減少すると、許可業者数も減少していきました。2013年以降、建設投資は増加に転じましたが、許可業者数は40万業者台で推移していることから、下げ止まった状態にあると考えられます。今年の調査では、ピークと比べると、12万7,028業者(21.1%減)となりました。

①-1 建設業の許可業者数の推移参考|国土交通省「建設業許可業者数調査の結果について-建設業許可業者の現況(令和 3 年 3 月末現在)-

資本金階層別の許可業者数は、1,000万円~5,000万円の階層が最も多い

資本金階層別建設業許可業者数のグラフを見ると、ピークの2000年には、個人で取得している業者は、15万8,227事業者存在しました。それについては、現在、半数以下である7万3,474事業者まで減少しています。過去20年の間に、個人経営の業者が淘汰されたと考えられます。

①-4 資本金階層別 許可業者数(2021年3月末) 資料1 許可業者数レポート-17参考|国土交通省「建設業許可業者数調査の結果について-建設業許可業者の現況(令和 3 年 3 月末現在)-

また、1,000万円~5,000万円未満の階層でも、取得業者数は減少しました。一方、5,000万円以上、500~1,000万円未満、500万円未満の3階層ではピーク時よりも現在の方が業者が多くなっています。

建設業許可業者数の推移(一般・特定建設業において)

建設業許可は「一般建設業許可」と「特定建設業許可」に区分されます。

一般建設業許可は、金額の制限なく、許可を受けているすべての建設工事を受注できます。特定建設業は、4,000万円以下の工事(建築一式工事は6,000万円以下)に限られます。
一般建設業許可を所得している業者は45万76業者で、前年同月より0.2%増加しました。
特定建設業を取得している業者は4万7,055業者で、1.3%増加しました。

①-3 一般・特定 建設業許可業者数の推移参考|国土交通省「建設業許可業者数調査の結果について-建設業許可業者の現況(令和 3 年 3 月末現在)-

建設業の許可業者数を業種別・資本金階層別にグラフ化すると

建設業許可は、29の業種に分かれており、このうち25業種で取得業者が増加しました。業種別にみると、とび・土工が最も多く、17万4,289業者(全体の36.8%)、次に建築工事業14万8,430業者(31.3%)、土木工事業13万0,880業者(27.6%)となります。1業種のみの許可を受けている業者は全体の56.5%、複数業種の許可を取得した業者は、43.5%でした。複数の許可を取得した業者は、前年より9.4%増加しました。

資本金階層別に許可業者数を見ると、どの業種も1,000万円~5,000万円以下の階層が最も多くなっています。また、建築、土木、大工、とび・土工の個人業者は、業種の母数が大きいこともあり、許可業者のなかで、一定の存在感があることがわかります。

2016年に、「とび・土工工事業」に含まれていた「解体工事業」が独立して、新たに許認可を得る業種に追加されており、1年間でプラス5,84業者(前年比9.1%増)となりました。

①-5 業種別 資本金階層別 建設業許可業者数(2021年3月末)参考|国土交通省「建設業許可業者数調査の結果について-建設業許可業者の現況(令和 3 年 3 月末現在)-

都道府県別 許可取得業者の数は?

次に、2021年3月末時点の事業者数47万3,952業者が、全国にどのように分布しているのか、特徴を見ていきます。

多いのは東京都(4万3,428業者・全体の9.2%)、大阪府(3万9,525業者・全体の8.3%)、神奈川県(2万8,306業者・全体の6.0%)、愛知県(2万6,856業者・5.6%)で、神奈川を除き東名阪の3都市圏を要する3県が上位でした。下位だったのは、鳥取県・島根県・高知県・徳島県で、これらの自治体は都道府県の人口ランキングでも同順で44~47位であったことから、人口と許可取得業者数には正の相関があることがわかります。

①-6 都道府県別の建設業許可業者数と建設工事受注高参考|国土交通省「建設業許可業者数調査の結果について-建設業許可業者の現況(令和 3 年 3 月末現在)-

まとめ

建設業の許可業者数は、ピーク時からは大幅に減少したものの、近年では40万業者台を安定的に推移しています。しかし、近年では他産業を上回る早いペースで高齢化が進んでいるため、人材不足による廃業も増えてきています。今後は、地方の災害防止や産業の保護などの観点からも、業者数を適度に保つ施策が求められていくのではないでしょうか。

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