建設総合統計からみる業界動向

今回のWAT REPORTでは、国土交通省が公表した「建設総合統計」をもとに、2020年の建設業の動向についてまとめました。

概要
建設総合統計は、国内の建設業を出来高ベースで把握することを目的とする加工統計です。「建築着工統計調査」「建設工事受注動態統計調査」で得た工事費額を着工ベースの金額として捉え、これらを工事の進捗に合わせた月次の金額に展開して、月ごと・年ごとの建設工事出来高を推計しています。
出来高とは、工事の仕上がりに応じて支払われる代金のことで、建設会社にとっては工事の売上げに当たります。

2020年の出来高は2019年から縮小し52兆3,925億円に

バブル経済がピークを迎えた1991年、出来高の総計(年計)は86兆3,860億円、民間が発注した工事の出来高が58兆7,950億円、公共工事の出来高が27兆5,910億円と最大になりました。バブル崩壊とともに建設投資は縮小し、2011年にはリーマンショックによる景気の悪化により、42兆0,752億円まで減少しました。その後、2019年には53兆3,926億円にまで及んでいますが、20年になって再び減少に転じました。
20年度の出来高は、総計が52兆3,783億円、民間29兆3,784億円、公共が22兆9,999億円でした。

出来高の推移参考|国土交通省「建設総合統計

91年の出来高に占める発注者の比率は、民間2:公共1でした。しかし、12年には民間工事の出来高が25兆7,290億円とピーク時の半分以下にまで減少したため、現在は半々に近づきつつあります。景気に左右されやすい民間に対し、公共工事は比較的安定していることから、今後さらに公共工事の比率が高まる可能性があります。

次に、2020年までの出来高の推移から「民間建築」「公共土木」を抜き出してみます。どちらも、過去5年間は毎年増加していますが、「民間建築」は今回の調査で減少に転じました。景気の拡大やオリンピック開催等で活気づいていた市場がピークを越えた可能性もあります。一方、「公共土木」は15年以降5年連続で増加傾向でした。今後も防災・減災工事の需要を背景に、底堅く推移すると考えられます。種類別の出来高推移参考|国土交通省「建設総合統計

最近の好況は南関東(東京圏)がけん引していた

続いて、地域別の工事費(出来高)を10年刻みにグラフにしました。
バブル期の余韻があった2000年と比較して、2010年には建設不況がほとんど底をついていたため、どの地域でもグラフが大きく凹んだ形になっています。2020年には、すべての地域で出来高が増加していますが、20年の特徴としては、震災復興があった東北と、首都圏再開発や五輪関連施設の整備等があった南関東(東京圏)の回復がめざましく、ほかの地方ではあまり大きな変化ないことが挙げられます。つまり、2020年までの回復は、ほぼ南関東(東京)の成長と震災復興事業がけん引していたと考えられます。

出来高の地域格差2参考|国土交通省「建設総合統計

最も出来高が大きかったのは、東京圏(南関東地方)で19.0%

では、東京は実際にどれくらいの比率を占めているのでしょうか。
出来高を地方別に分けると、南関東地方(東京、埼玉、千葉、神奈川)は19.0%で、次いで東北地方で15.1%、九州が11.8%でした。北関東(茨城、栃木、群馬、山梨、長野)は7.5%であり、日本全体の出来高のうち、2割が南関東(東京圏)です。
ただし、大都市圏においては民間発注の工事が多く、地方は公共事業の比率が高いことが知られて民間発注の工事が減少すれば、相対的に地方の比率が上がる可能性もあります。

出来高の地域格差参考|国土交通省「建設総合統計

2020年は民間発注の建築の「居住用」が減った分、公共土木が伸びた

最後に、建物の種類別に工事費(出来高)を確認します。
民間が発注した建築工事は、「鉱業、建設業、製造業用」が-16.8%で最も減少し、「居住用」が7.2%減、「商業、サービス業用」が6.3%減となりました。土木も19.0%減少と、全部門が減少しました。

建物の種類別工事費参考|国土交通省「建設総合統計

一方、公共機関が発注した土木工事は、「一般」が8.9%増加、「企業」は-17.5%でした。建築工事は「居住用」が4.9%増加しました。全体としては民間建築の「居住用」が減った分、公共土木の「一般」が伸びて、全体を下支えした形になりました。

まとめ

近年では、安定した工事量が見込める公共事業を下支えに、東京都市部の建設需要が市場をけん引してきたことがわかりました。
現在は、新型コロナウイルス流行の影響もあり、現場の感染防止対策や、感染者が出た際の工事の中断など、施工管理にも影響が出ています。これについても、工事の進捗への影響を含め、今後の状況を注視する必要がありそうです。

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