建築物リフォーム・リニューアル調査から見る 市場の概況 (令和3年度/2021年度 第1四半期)

今回のWAT REPORT では、国土交通省による「建築物リフォーム・リニューアル調査(2021年4~6月)」をもとに、リニューアル工事の市場動向をレポートします。

「リフォーム・リニューアル調査」は国土交通省が、既存の建物のリフォーム・リニューアル工事の内容について、建設許可業者5,000者に実施する調査です。外れ値等を処理するなど国土交通省が、四半期ごとに公開しています。

2021年度第1四半期には前年同期比12.0%増と5期ぶりに増加

2020年度の第1四半期(4~6月期)に新型コロナウイルス感染症が一気に拡大すると、右肩上がりだったリフォーム・リニューアル市場は失速し、前年同期比マイナスとなりました。実際の受注高を見ても、前年同期の2兆3,265億円から1兆7,888億円(21.9%減)と大きく減少しました。
しかし、直近の2021年度第1四半期になると、再び前年同期比がプラスに転じ、12.0%増と5期ぶりに上向きました。非住宅建築物の受注高も4カ月ぶりに前年同期を上回っています。コロナ前の水準には戻っていないものの、一旦底をついた形になりました。
1_2021年第1四半期の受注高と推移
参考|国土交通省「建築物リフォーム・リニューアル調査 2021年度4~6月期

建設経済研究所が4月に発表した「建設投資の見通し」によると、リフォーム・リニューアル市場の規模は2020年に縮小するものの、21年にはやや持ち直すとしており、第1四半期の受注高の動きは、それを裏付けています。
①-1-民間建築補修(改装・改修)市場規模の推移
参考|一般財団法人 建設経済研究所「建設経済モデルによる建設投資の見通し
( 2021 年 4 月 )」

発注者別では民間企業等からの発注が、前年同期から25.6%減少

第1四半期の発注者別受注額は、民間企業等からの発注が、前年同期から25.6%減少しています。一方、公共発注の工事は21.6%増加しており、底堅く推移しています。
その他、管理組合は1兆4,779億円(11.1%)、個人が113億円(20.8%減)でした。
参考|国土交通省「建築物リフォーム・リニューアル調査 2021年度4~6月期

2020年に急減後、回復してきた事務所リニューアル

続いて、建物用途別のリニューアル工事の受注高については、建築物をいくつか用途別にピックアップし、動態を見ていきます。
事務所リニューアル工事の受注高は、2018、19年と緩やかに増加していましたが、2020年に対前年同期でマイナス28.5%と急落し、1年はマイナス成長が続いています。最も近い2021年第1四半期では1.4%減となり、減少幅は小さくなったものの、いまだ下げ止まっていません。
2_事務所リニューアルの受注高推移
参考|国土交通省「建築物リフォーム・リニューアル調査 四半期

物販店舗のリニューアルは回復の兆し。飲食店はトーンダウン中

次に、店舗系の直近4年間のリニューアル受注高の推移を見ていきます。
2020年の緊急事態宣言発令の際には、新型コロナの感染予防のため人流が減っている期間に、事業者が営業店舗のリニューアル工事をするトレンドもありましたが、グラフを見た限りでは、単に先行きの見えない状況の中で、工事の手控えが起きているように読み取れます。
3_飲食店・物販店舗の受注高推移
参考|国土交通省「建築物リフォーム・リニューアル調査 四半期

灰色の棒グラフが表している物販店舗では、20年に大きく落ち込み、4期連続で前年同期を下回り減少傾向でした。21年第1四半期には2,288億円(対前年同期8.3%増)と、回復の兆しを見せています。

一方、青い棒グラフが表す飲食店の受注高推移を見ると、2018年、19年と金額が徐々に増加していましたが、20年の第2四半期には前年同期比52.2%減となるなどコロナ前に比べて低い水準になりました。直近の第1四半期でも受注高は前年同期比13.6%減となっています。

生産施設(工場・作業場)のリニューアルは前年同期比38.4%増。倉庫は低調続く

青い棒グラフが表す生産施設(工場・作業場)の受注高も、2020年第1四半期に大きく落ち込んでおり。こちらも新型コロナによる発注の手控え等に影響を受けたのではないかと推測できますが、直近の第1四半期で4,495億円(38.4%増)と大幅に回復しました。
4_生産施設・倉庫 流通施設の受注高推移
参考|国土交通省「建築物リフォーム・リニューアル調査 四半期

灰色のグラフが表す倉庫・流通施設の受注高も2020年に下落、5カ月連続で前年同期比マイナスとなりました。「巣ごもり需要」で貨物量が増えるなど、物流に注目が集まっていますが、増築・改築・改装といったリニューアル市場にはあまり変化がありませんでした。

受注した建物の用途(非住宅)は、生産施設・事務所・物販店舗の順に多かった

第1四半期に非住宅建築が占めるリニューアル受注の割合は、33.0%でした。内訳としては、多い順に生産設備(4,495億円)、事務所(3,483億円)、物販店舗(2,288億円)、学校の校舎(1,681億円)等となっています。
5_建物用途別割合(非住宅建築物)
参考|国土交通省「建築物リフォーム・リニューアル調査 2021年度4~6月期

また、発注された工事種類を件数別に見ると、最も受注件数の大きい改装・改修工事、維持・修理工事で、受注件数が24.2%増加しました。ただし、受注高は前年度から横ばいであることから、1件あたりの工事口化の動きがあるのではないかと考えられます。
一部改装工事では、件数が19.0%の減少に対し、受注高は10.2%増、増築工事では、17.1%の減少に対し受注高は2.0%増と、1件あたりの受注高が増加しています。
6_工事種類別・受注件数 受注高
参考|国土交通省「建築物リフォーム・リニューアル調査 2021年度4~6月期

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