建設業における女性就業者の比率と職種、地位について

建設業界 女性雇用

今回のWAT REPORTでは、厚生労働省の「雇用均等基本調査」、総務省の「労働力調査」、帝国データバンクの「女性登用に対する企業の意識調査」をもとに、建設業界における女性就業者の採用や就業状況について報告します。

建設業で女子新卒者を採用した企業は全体の3割

生産年齢人口が減少する中、多くの企業にとって多様な人材の活用は課題です。特に人材不足に悩んでいる建設業にとっては、女性の入職者を増やし、ライフイベントを経ても働き続けられる環境の整備が重要となります。
厚生労働省の「雇用均等基本調査」は、常用労働者10人以上の企業と5人以上の事業所を対象に、一定精度を確保しつつ無作為抽出して調査を実施しています。
調査によると、2020年、建設業者のうち、女子新卒者を採用した企業の割合は、30.5%でした。女子の新卒者を雇用した企業は、全体の3割にすぎません。これは、全産業でも2番目に低い水準です。金融業・保険業や医療・福祉分野では8割を超える企業で女子新卒者を採用しています。建設業は他産業と比べ、大幅に女子新卒者の入職が少ないことが見て取れます。

産業別・新規学卒採用者に女性を含む企業の割合
参考|厚生労働省「雇用均等基本調査(女性雇用管理基本調査)」新規学卒採用者に占める女性割合別企業割合

2021年8月において、建設業で就業している女性の数は81万人

「労働力調査」は、全国の100万調査区から毎月選定される2900調査区において、抽出された各15戸を、調査員が訪問して行う標本調査です。
この調査によると、建設業における女性就業者数と女性比率の推移を見ると、2012年に70万人だった女性就業者は、2020年に82万人になり、その比率は13.9%から16.7%に上がりました。建設ラッシュだった19年を過ぎて、若干割合が低下しましたが、建設業界で働く女性は増加傾向が続くと見られます。

建設業における女性の就業者数と割合
参考|厚生労働省「労働力調査

では、増えた12万人の女性就業者は、どのような職種で増加したのでしょうか。「労働力調査」において、女性就業者の職業ごとの人数と比率を検討します。

女性は事務職に多く、営業職・技能労働者に少ない

建設業における女性技術者数と割合
参考|厚生労働省「労働力調査

施工管理等を行う「技術者」に分類されていたのは、2020年に3万人でした。2014年からの6年間で約2万人増え、比率も3.7%から8.1%に上がりました。

建設業における女性の事務職従事者と割合
参考|厚生労働省「労働力調査

「事務従事者」は2020年に61万人、女性比率は全体の75.3%です。12年から6万人増えており、過去10年で増加した12万人の女性就業者の約半数は、事務職であったことがわかります。建設業は元来、現場は男性、バックオフィスは女性という住み分けのイメージがありますが、このデータから、女性が事務職に占める割合は大きく、その傾向は強まっていることが見て取れます。

建設業における女性の営業職従事者と割合
参考|厚生労働省「労働力調査

営業職である「販売従事者」も2012年の2万人から20年には3万人に増加し、比率も11.1%まで上昇しました。事務職と同じオフィスに通う仕事であっても、営業職になると女性の占める割合は小さくなります。女性が進出する余地が残されていると言えるでしょう。
建設業における女性現場職と割合
参考|厚生労働省「労働力調査
現場の技能労働者が分類される「建設・採掘の仕事」では、2012年からの10年で、女性就業者は1万人増加し、6万人になりました。総数274万人のうちのわずか2.3%であり、伸び悩んでいると言えます。海外では現場で働く女性はもっと多いものですが、日本では力仕事は女性に向かないという考え方が残っており、女性就業者を増やす上で課題となっています。

(トピックス)
現場で働く女性の「女性技能者協会」が発足
2021年10月、クラウドファンディングによる支援金を得て、女性技能者による「一般社団法人女性技能者協会」が設立されました。現場の環境整備や資格取得、技能向上に関する活動等に取り組むとともに、仕事の魅力を一般に伝えるとしています。

政府目標の「2030年までに女性役員比率30%」は実現可能か?

政府は、「第5次男女共同参画基本計画」の中で、「2030年をめどに、可能な限り早い時期に女性の役員比率を30%以上にする」と表明しました(本来20年までとしていた目標を再設定しています)。計画においては、特に、民間企業における成果目標として、2025年をめどに
・係長相当職の女性を18.9%(2019年時点)から30%に
・課長相当職の女性を11.4%から18%に
・部長相当職の女性を6.9%から12%に

増やすことを定めており、職場において、
・男女の均等な機会と待遇の確保および各種ハラスメントの防止
・ポジティブアクションの推進等による、女性の参画拡大・男女間格差の是正
・非正規雇用労働者の待遇改善、正規雇用労働者への転換の支援

等に取り組むとしています。

この目標を現状のデータと比較してみましょう。帝国データバンクの「女性登用に対する企業の意識調査」は、全国2万4,285社(回答率45.3%)に実施しており、女性管理職の割合などの現状がわかります。
帝国データバンクの調査結果からは、建設業界の女性管理職の割合は6.1%(前年比0.7%増)にとどまっており、この増加率では、10年足らずで30%を達成することは難しいと考えられます。また、女性管理職が30%以上を占める割合は、4.7%(前年同期比0.3%増)となっており、まだ少ないのが現状です。

女性管理職の平均割合
出典|帝国データバンク「女性登用に対する企業の意識調査(2021 年)

女性管理職比率が30%以上の企業の割合
出典|帝国データバンク「女性登用に対する企業の意識調査(2021 年)

まとめ

深刻な人手不足を背景に、建設関連企業では女性の採用に力を入れており、女性就業者は増加しています。しかし、女性はライフステージによって働き方が大きく変わるため、出産・子育て・介護などのイベントを経ても長く働き続けてもらうためには、勤務制度の柔軟化やテレワークの推進など、労働環境の整備は欠かせません。

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