増加する外国人労働者と技能実習生

増加する外国人労働者と技能実習生

このレポートでは、厚生労働省が2021年1月末に公表した「外国人雇用状況の届け出状況(2020年10月末時点)」のまとめ資料を用いて、建設業で働く外国人労働者について報告します。

概要
わが国で働く外国人労働者は172万人を超えました。これは、日本の総人口の約1.4%にあたる人数で、新宿区・世田谷区・渋谷区の人口の合計と同じくらいの人数です。2020年に限れば、新型コロナウイルスの感染拡大により、受け入れ数が例外的に減少しましたが、少子高齢化がすすむなか、現状の産業規模を維持していくためには、海外からの労働力受け入れを欠かすことはできません。
人手不足が続く建設業界においても、外国人労働者の受け入れは増加しています。19年には、労働に特化した新しい在留資格「特定技能」が設けられ、国土交通省が就職支援や安定的な雇用に向けたマッチングサービスを開始しました。
一方で、入ってきた技能実習生らに適切な扱いがされていないケースも報告されており、課題が残ります。送り出し側と受け入れ側の双方に、環境の改善が求められています。

日本で働く外国人労働者は172万人を超えた

①-1 外国人労働者数の変化
参考|厚生労働省「「外国人雇用状況」の届出状況表一覧(令和2年10月末現在)
厚生労働省が1月末に公表した「外国人雇用状況の届け出状況(2020年10月末時点)」によれば、日本で働く外国人労働者は172万4,328人(26万7,243事業所)となりました。
技能実習は5年前に比べると約2倍の人数になり、毎年増加しています。

産業別に見ると、早くから外国人労働者の受け入れが進んでいた製造業や、サービス業・卸売業、小売業で全体の半数を超えています。建設業は6.4%でした。
①-5 産業別 外国人労働者数-new参考|厚生労働省「「外国人雇用状況」の届出状況表一覧(令和2年10月末現在)

建設分野で働く外国人は11万人あまり。全体の6.4%を占める

現在、日本では11万0,898人(3万1,314事業所)が建設分野で働いています。
2016年からの増加率は、前年比41.0%、34.2%、24.4%、35.9%、19.0%であり、直近では新型コロナの影響で増加スピードが鈍ったものの、増加傾向は変わりませんでした。

①-3 建設業の外国人労働者数参考|厚生労働省「「外国人雇用状況」の届出状況表一覧(令和2年10月末現在)

建設分野での外国人受け入れには、3つの仕組みがあります。

技能実習生 国際貢献のため、報酬を伴う技能実習や研修を行う
特定技能 新在留資格。一定の技能を有した、即戦力となる外国人を受け入れる
特定活動 震災復興や五輪特需に対応するため設けられた資格。2020年度で終了

技能実習生は、条件を満たせば特定技能に移行することも可能です。
昨今では新型コロナの影響で帰国できなくなった技能実習生を、特定技能に切り替えるよう支援する会社が増えており、多少の金額をかけても戦力になる人材を確保しておきたいという事情がうかがえます。
建設業で働く外国人労働者の在留資格を見ると、2020年には技能実習生として、7万6,567人が働いていました。特定活動は5,303人でした。
また、永住者や日本人の配偶者の身分に基づく在留資格の労働者も一定数おり、前年比で増加しました。

①-6 建設業における外国人労働者の在留資格-new
参考|厚生労働省「「外国人雇用状況」の届出状況表一覧(令和2年10月末現在)

建設業の外国人労働者は東京圏がずば抜けて多い

地域別では、東京が最も多く1万7,376人、次いで名古屋の1万0,534人、僅差で神奈川の1万0,323人と埼玉の1万0,323人が続きました。
圧倒的に多いのが東京圏。愛知、大阪、福岡の大都市にも集中していることがわかります。
対照的に、東北地方では少なく、青森・岩手・秋田・山形は3ケタ台です。人口密集地には外国人労働者も多く、逆は少ない傾向が見えます。東京は2020年の五輪特需があり、より需要が高かかったと考えられます。

①-4 地域別 建設業の外国人労働者
参考|厚生労働省「「外国人雇用状況」の届出状況表一覧(令和2年10月末現在)

ベトナム人が最も多く、中国人の4倍

建設業で働いている外国人にはベトナム人(5万7,862人)が最も多く、2位の中国(1万4720人)の4倍弱です。東南アジアのフィリピン、インドネシアのほか、南米ブラジルからの就労者もおり、韓国とペルーからも同程度来日しているようです。

①-2 国籍別 建設業の外国人労働者参考|厚生労働省「「外国人雇用状況」の届出状況表一覧(令和2年10月末現在)

もともとは中国人も多かったのですが、国内の所得水準が上がるなどの理由で割合が減少しました。
ベトナムは日本企業が多く進出している国で、日本に親近感を持つ人が多く、ベトナム政府の積極的な後押しもあったことで、日本への送り出しが増加しました。
向上心が高く勤勉で、日本人と感覚が近い国民性なので、現場でも好感を持たれやすいと言われています。

新資格の特定技能、建設業では514人が就労

2019年に在留資格「特定技能」が新設されました。「特定技能1号」は、試験に合格するか、技能実習2号を修了することで、5年間の就労が可能になります。建設業では514人がこの資格で就業しています。
①-7 産業別 特定技能の人数参考|厚生労働省「「外国人雇用状況」の届出状況表一覧(令和2年10月末現在)

さらに、建設業であれば、家族と日本に住め、在留資格が何度でも更新できる「特定技能2号」の資格も適用できます。
まだ熟練者に引き続き働いてもらうためにも、今後この資格が役立っていくはずです。

まとめ

働き手不足になっている建設業界では、「特定技能」の外国人採用は、避けて通ることのできない課題であると言えます。
最近でも、国土交通省により、実習生の建設キャリアアップシステムの登録や、安定的な報酬支払い定め、1事業所あたりの人数制限といった対策が取られ、待遇改善も進んできました。
他の先進国でも、人口減は同じように起きていることから、いかに良質な外国人材を獲得するかの競争も起きる可能性があり、早いうちからの環境整備が必要です。

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