令和3年度(2021年度)建設投資見通し

建設投資

今回のWAT REPORTでは、国土交通省の「建設投資見通し(2021年度)」をもとに、2021年度の建設投資見通しと業界動向についてお伝えします。

2021年度の建設投資見通しは、前年比2.9%増の総額62兆6500億円

国土交通省は、2021年度の建設投資について、前年から2.9%増えて、総額62兆6500億円になるとする見通しを発表しました。「建設投資見通し」は、日本の建設活動について、出来ベースの投資額を推計したものです。今年は、総額にリニューアル投資が加わった直近7年間において、最大規模になると予想されています。

昨年は新型コロナウイルスの感染拡大で設備投資が弱含みましたが、今年は企業の投資も若干回復傾向にあることに加え、「防災・減災、国土強靭化の推進など安全・安心の確保」初年度分が補正予算として上積みされました。その結果、政府投資は24兆5,300億円(前年度比2.4%増)、民間投資が38兆1,200億円(3.2%増)となりました。

1) 建設投資の推移参考|国土交通省「令和3年度建設投資見通し

建築投資は2.7%増、土木投資は4.0%増の見通し

各項目の増減について、「建設投資の対前年伸び率」のグラフを見ていきます。

総計については前年度比2.9%となりました。分野ごとの内訳としては、建築分野は2.2%増で、うち住宅が1.5%増、非住宅が2.5%増でした。いずれも減少した前年から増加に転じました。
建築補修(改装・改修、ただし投資としてのリニューアルに限る)は2.7%増でした。
土木分野は、4.0%増で、政府は2.0%増、民間は9.2%増と前年に引き続き増加しました。

2) 建設投資の対前年伸び率
参考|国土交通省「令和3年度建設投資見通し

近年、建設投資がGDPに占める比率は10%前後

国内総生産(GDP)に占める建設投資の比率は、時代によって変化してきました。戦後の高度経済成長期には、発展途上だったわが国の経済成長と建設投資は強く結びついており、1970年台には建設投資がGDPの25%近くを占めていました。その後、比率は一旦は減少したものの、バブル期に再び増加。2010年代のリーマンショックで1ケタ台になりましたが、最近では10%前後で推移しています。2021年の比率は11.2%でした。

6) 建設投資額のGDPに占める比率
参考|国土交通省「令和3年度建設投資見通し

5) 過去の建設投資額とGDPの推移
参考|国土交通省「令和3年度建設投資見通し
参考|内閣府「国民経済計算(GDP統計)

2021年の建設投資見通しの構成比は、民間と政府がほぼ6:4

2021年の建設投資見通しの構成比を見ると、民間関連が61%、政府関連が39%でした。民間投資は、住宅が25%、非住宅が17%、補修10%、土木9%です。政府投資は土木29%、非住宅7%、建築補修(改装・改修)2%、住宅1%です。
政府土木が最も多くを占め、民間住宅、非住宅も比率が高めです。政府からの受注が多くを占めることからも、建設業の公共性の高さが伺えます。
4) 2021年度建設投資の構成(名目)
参考|国土交通省「令和3年度建設投資見通し

国家予算(一般会計)では、公共事業費が全体の5.7%を占める

2021年の衆院選では、公共事業費の使い道が争点の1つになりました。政府建設投資には、国民の注目が集まっています。
2021年度の国家予算(一般会計)では、公共事業費が6.1兆円(全体の5.7%)と、大きな割合を占めており、今後も増加する見通しです。(建設投資見通しでは、補正予算やその他の分野からの支出も合計しているため、政府投資とイコールではありません)。
10) 公共事業費の国家予算に占める比率2021年度
参考|財務省「予算はどのような分野に使われているのか

投資額の建築・土木別の推移について

建築・土木別に投資額の推移を見ると、いずれも2010年代前半を底に、東日本大震災の復興工事や東京五輪関係工事で増加傾向だったとわかります。
建築分野では、直近の20年間で2018年の40.5兆円が最大で、新型コロナの影響で経済活動が制限された20年には減少しました。21年の投資額は前年度比2.2%増の38兆3500億円を見込みます。
3) 建築投資の推移
参考|国土交通省「令和3年度建設投資見通し
一方、土木分野は2001年の30.5兆円が最も多く、12年に底を打ってからは、増加しています。21年の投資額は24兆3,000億円を見込みます。
7) 土木投資の推移
参考|国土交通省「令和3年度建設投資見通し
建築補修(改装・改修)投資は、合計が始まった2015年より、7,500億円前後で推移しています。コロナ禍前の19年が最大で、21年にはやや持ち直しの兆しが見えます。投資額は7兆4,900億円を見込みます。
8) リニューアル投資の推移
参考|国土交通省「令和3年度建設投資見通し

3年前から民間投資は減少、政府投資が市場を底堅く支える

2021年の建設投資見通しでは、政府投資が24兆5300億円に対し、民間投資が38兆1200億円で比率にして39:61でした。2010年代には民間投資の比率が増加しましたが、五輪イヤーを経て、3年前から民間投資は減少しています。現在は、政府投資の比率が増加しています。
9) 政府・民間別構成比の推移
参考|国土交通省「令和3年度建設投資見通し

まとめ

2021年度の建設投資見通しを見ると、政府投資の比率が上がっています。東京五輪関連工事の竣工に続く昨年のコロナ禍で、民間投資は減少傾向にあり、防災・減災、国土強靭化に注力する政府の公共投資が市場を底堅く支える構図です。

新型コロナウイルス感染症については、未だ終息の見通しが立っておらず、経済活動の制限が続く中で、来期の民間設備投資の動向については先行き不透明な状況です。

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