今回のWAT REPORTでは、国土交通省の「建設投資見通し(令和2年度)」「建築物リフォーム・リニューアル調査(令和2年度第2四半期)」から、リニューアル工事の市場動向をお伝えします。
概況
2020年第2四半期のリニューアル工事の受注高は、前年同期より12.7%落ち込み、2兆8,432億円でした。
うち、非住宅建築物のリニューアルは、受注高が12.5%減となる1兆9,805億円、受注件数は19.7%減の65.6万件となりました。
第1四半期と合わせると、リニューアル全体の上期の受注高は5兆3.065億円でした。
※「建築物リフォーム・リニューアル調査」は、建設業許可業者5,000者に対して実施しているもので、500万円以下の工事も集計しています。この調査における「リニュー アル」の定義は、今ある資産(建物や土木構造物など)の補修・改修ではなく、より積極的な投資としてのリニューアル(耐震改修や、省エネ改修、設備リニューアルなど)を指します。
目次
国土交通省の「建設投資見通し(令和2年度)」による投資予想
国土交通省の「建設投資見通し(令和2年度)」によると2020年度(20年4月~21年3月)のリニューアル投資額は7兆7000億円となり、集計の始まった15年からほぼ変わらず、横ばいで推移する見通しです。
民間投資と政府投資に分けてみると、民間投資は、新型コロナの影響による投資手控えなどにより、前年度比5.9%減の6兆2,700億円となる予測です。補正予算による追加投資などにより、政府投資については、最終的に2.9%増の1兆4,300億円になると見られています。
参考:国土交通省|令和2年度(2020年度)建設投資見通し
参考:国土交通省|令和2年度(2020年度)建設投資見通し
リニューアル投資の占める割合は、2020年度の建設投資市場において12.2%、これまでと同じ1割程度の規模になると予想されます。
内訳は、民間リニューアル投資が9.9%、政府リニューアル投資が2.3%で、こちらも今までとほぼ同じ比率です。
※以下の記事は、国土交通省「建築物リフォーム・リニューアル調査(令和2年度第2四半期)」によります。
2020年第2四半期の非住宅建築物リニューアル投資は持ち直しの兆し
2020年第2四半期における非住宅建築物のリニューアルは、前年同期比で売上高が12.5%減となる1兆9,805億円、受注件数は19.7%減の65.6万件となりました。
参考:政府統計の総合窓口(e-Stat)|建築物リフォーム・リニューアル調査 に基づき作成
参考:政府統計の総合窓口(e-Stat)|建築物リフォーム・リニューアル調査 に基づき作成
住宅を含むリニューアル市場全体の4半期ごとの受注高推移を見ると、20年第2四半期の受注高は2兆8,432億円(前年同期比12.7%減)でした。
第1四半期と合わせると、上期の受注高は5兆3,065億円となりました。
新型コロナの影響はあるものの、前期に比べ受注はゆるやかに持ち直しており、前年同期比もマイナスとはいえ、前期と比較すると改善しています。
参考:国土交通省|建築物リフォーム・リニューアル調査報告(令和2年度第2四半期受注分)より作成
参考:国土交通省|建築物リフォーム・リニューアル調査報告(令和2年度第2四半期受注分)より作成
非住宅のリニューアル投資は受注件数、受注高ともに減少
2020年第2四半期の受注高を工事種類別に見ると、非住宅建築物においては一部改築の落ち込みが最も大きく、5,030件(前年同期比67.3%減)。増築の受注件数も2,136件(同51.4%減)と減少しました。
また、件数の多い改装・改修工事、維持・修理工事は、前年同期より2割弱少ない64万8,611件(前年同期比18.6%減)の受注でした。
受注件数の合計は、65万5,777件(19.7%減)。受注高は1万9,895件(12.5%減)でした。
参考:国土交通省|建築物リフォーム・リニューアル調査報告(令和2年度第2四半期受注分)より作成
住宅分野で電気、機器設置工事業が大幅に受注増
2020年第2四半期における非住宅の受注件数では、職別工事業が最も落ち込み、前年同期比35.9%減の10万4,003件、電気、機械器具設置工事業が16万7,126件(同32.6%減)となりました。
一方で、建築工事業は22万0,229件(同7.9%減)と比較的落ち込みは少なく、管工事業は増加して12万2,045件でした。
一方、住宅リニューアルにおいては、リモートワーク、ステイホームなどで新たな改修需要が生まれるなどで、電気・機械器具設置工事業の受注件数が急増しました。
参考:国土交通省|建築物リフォーム・リニューアル調査報告(令和2年度第2四半期受注分)より作成
参考:国土交通省|建築物リフォーム・リニューアル調査報告(令和2年度第2四半期受注分)より作成
コロナ禍の影響か医療施設の受注高が40%増
構造別では、医療施設リニューアルの受注高が前年同期比41.7%増の1,180億円となり、増加しました。
一方、コロナ禍で打撃を受けた飲食店や倉庫・流通施設、宿泊施設、老人福祉施設は大幅減となったほか、生産施設(工場、作業場)も減少しました。
リニューアル工事をした建物の建設時期としては、非住宅建築物では1981~2000年の20年間に建てられた建築物の改修需要が多くありました。
参考:国土交通省|建築物リフォーム・リニューアル調査報告(令和2年度第2四半期受注分)より作成
参考:国土交通省|建築物リフォーム・リニューアル調査報告(令和2年度第2四半期受注分)より作成
また、非住宅建築物における発注者別の受注高は、民間企業等からの受注が落ち込み、前年同期比19.8%減の1兆3,715億円と2割程度減少しました。
公共工事の受注は22.5%増加し、5,389億円でした。
参考:国土交通省|建築物リフォーム・リニューアル調査報告(令和2年度第2四半期受注分)より作成
まとめ
コロナ禍による計画変更や中止などの影響で、リニューアル工事の受注にも影響が出ていますが、病院関係の改修や在宅ワークなどのリフォームなど、新たな需要も生まれています。今後の感染状況や景気動向にも、引き続き留意していく必要があります。