週休2日制と土日閉所の取り組み

週休二日

今回のWAT REPORTでは、厚生労働省の「就労条件総合調査」および国土交通省の営繕工事での「週休2日(現場閉所)工事のモニタリング」対象工事アンケート、一般社団法人日本建設業連合会(日建連)による「週休二日実現行動計画 2019年度通期 フォローアップ報告書」「週休2日実現行動計画」をもとに、建設業界における週休2日制度導入の取り組みについて取り上げます。

概要
建設業界では、建設現場の週休2日を定着させるために、土曜日に一斉閉所日を設けたり、週休8閉所を確保するなどに取り組んでいます。
「工期が間に合わない」「現場の事情で実施が困難」といった理由や、日給月給の職人の収入が減ってしまうといった課題は残るものの、若手入職者を増加させるためにも、働き方改革を進めていく必要があります。

大企業では全産業平均を大きく超えて完全週休2日制を実現

厚生労働省の「就労条件総合調査」によると、完全週休2日制を取り入れている企業の割合は、1000人以上の規模の大企業で87.4%と調査産業の平均値を23.8%上回る高い水準でした。
①-2 完全週休二日制を採用している企業の割合
出典|政府統計の総合窓口(e-Stat) 就労条件総合調査 平成29年_就労条件総合調査 労働時間制度(第7表)を基に弊社作成

(完全週休2日制とは、年間を通じて毎週2日休みがあるという意味で、土曜休みとは限らない)。
他産業と比較すると、従業員が1000人以上の企業においては、製造業平均、調査産業計のどちらも上回る高い水準です。一方で、従業員が30-99人の事業所では20.5%と、調査産業計の約半分の割合になりました。製造業と比較しても16.2%低く、企業規模が小さくなると、週休2日制の企業の割合は少なくなるとわかります。
厚労省の調査外ではありますが、建設業では、30人未満の企業が全体の9割以上を占めるため、これらの企業においても週休2日制の普及率を高める必要があるでしょう。

人数規模 事業所数 割合
総数 492,734 100%
1-4人 277,364 56.2%
5-29人 197,943 40.1%
30-99人 15,044 3.0%
100-299人 1,492 0.3%
300人以上 248 0.05%

参考|総務省「経済センサス 平成28年活動調査

規模が小さくなると週休2日制の採用数も減少

厚生労働省の「就労条件総合調査」では、「何らかの週休2日制を採用している企業」の割合も調査しています。ここでいう「何らかの週休2日制」とは、「完全週休2日を含め、月1回以上週2日の休みがあり、他の週は毎週1日の休みがある」という意味で、この「何らかの週休2日制」を採用している会社は、建設業全体で82.1%で、他産業の平均と近い水準でした。
①-1 何らかの週休二日制を採用している企業の割合
出典|政府統計の総合窓口(e-Stat) 就労条件総合調査 平成29年_就労条件総合調査 労働時間制度(第7表)を基に弊社作成

規模別に見ると、1000人以上の大企業はすべて何らかの週休2日を採用しています。100人-999人規模でも9割を超え、100人以上の規模の企業であれば、ほとんどが何らかの週休2日制を採用しています。30-99人規模の企業では、この割合は79.5%となり、100人以上の企業の水準より下がりますが、調査産業計と同水準です。

週休2日の達成要因は「円滑な協議」と「適正な工期設定」

国土交通省では直轄営繕工事を週休2日で運営するよう働きかけており、2017年からは実際に閉所ができているか、工事のモニタリングを実施しています。2020年3月末に完了したモニタリング工事95件では、そのうち約7割(64件)が週休2日を完遂しました。
②-1 週休二日を達成できた理由
参考|国土交通省 「営繕工事における「週休2日(現場閉所)工事のモニタリング」について」を基に弊社作成
週休2日を達成できた要因としては、「円滑な協議の実施」「適正な工期設定」「工事間の調整が適切」と回答した現場が多く、事由としては
・着工前に入居官署と閉庁日作業などの打ち合わせができた
・作業内容の変更にあわせて工期延伸が認められた
・各工事の関係者で毎週工程会議を実施し、工事全体を計画的に勧められた
などの回答がありました。

週休2日を達成できなかった31件の要因としては、営繕工事であるがための「執務平行改修での施工上の制約」のほか、「職人確保が困難」「施行中の不確定要素」「前工程の遅れ」などがありました。
②-2 週休二日を達成できなかった理由
参考|国土交通省 「営繕工事における「週休2日(現場閉所)工事のモニタリング」について」を基に弊社作成
具体的には
・仕上げ工事における職人不足が影響した
・別途行われていたインフラ整備工事の施工時期が遅れ、想定していた工事の時期に相違が出た
・施工に入る前の決め事(サッシ・色彩)が遅れ、サッシ廻りの施工(配管・ダクト貫通)できなかった
・図面ではわからない部分が多くあった
・入居官署による閉庁日指定作業が多かった
などの回答がありました。

■23年度には国交省の発注工事はすべて「週休2日交代制モデル工事」へ

国土交通省は、20年度から原則すべての工事を週休2日対象工事に指定。希望する受注者は週休2日制で工事ができるよう、かかる経費について、補正係数を上乗せして予算を組んでいます。
23年度には、閉所が困難な工事(災害復旧工事や交通規制、完成時期の制約がある工事や、連続施工せざるを得ないシールド工事など(についても、人員を交代で休ませ現場を閉所しない「週休2日交代制モデル工事」を拡大し、すべての工事に適用する考えです

現場全体の4分の3強が土日閉所に取り組んでいる

日本建設業連合会では、目標として2021年度末までに、土日閉所を基本とする週休2日(4週8閉所)の定着を目標としています(週休2日実現行動計画)。
19年10月から20年3月にかけて週休2日の実施についてアンケート調査を実施し、会員企業のうち109社から回答を得ました。また、事業所は請負金額1億円以上または工期4カ月以上の1万7227現場(土木:8160現場、建築:9067現場)が対象です。
③-1 土日閉所を基本とした作業所の比率
参考|一般社団法人 日本建設業連合会「週休二日実現行動計画 2019 年度通期 フォローアップ報告書」を基に弊社作成

土日閉所を基本とした作業所の割合については、全体の4分の3強が「土日閉所を基本とした作業所」でした。
また、土木で約8割、建築で約7割が土日閉所を基本とし、土木工事の方が土日閉所の実施率が若干高いことがわかります。
③-2 土日閉所の実施状況
参考|一般社団法人 日本建設業連合会「週休二日実現行動計画 2019 年度通期 フォローアップ報告書」を基に弊社作成

日建連が目標とする「4週8閉所以上かつ土日閉所」を実施した事業所は、全体の2割強でした。1日届かなかった4週7閉所の事業所も合わせると、3.5割となります。
一方で「4週5閉所かそれ未満かつ土日以外に閉所」した事業所も全体の1割強(1862現場)あり、決して少なくないといえます。

建築では2割、土木では3.5割が土日に4週8閉所を実施

建築工事(9067現場)の事業所においては、全事業所のうち2割弱の1750事業所が4週8閉所以上を実施していると回答しました。4週6閉所かそれ以下の事業所の割合が高く、6割強にのぼります。
また、土日閉所を基本としている現場は6516現場で、全体の7割強です。
また、「4週5閉所未満かつ土日以外」に閉所を実施したと回答した現場は1.5割程度でした。
③-4 建築事業所の閉所状況
参考|一般社団法人 日本建設業連合会「週休二日実現行動計画 2019 年度通期 フォローアップ報告書」を基に弊社作成

土木工事(8160現場)の事業所においては、全事業所のうち3.5割弱の事業所が4週8閉所以上と回答しました。4週7閉所も含めると半数以上を占めます。
また、土日を基本として閉所している現場は6522現場と、全体の8割弱です。土木工事には公共工事が多く、官主体の工事ではより積極的に土日閉所や休日の確保が推進されているためと考えられます。
③-3 土木事業所の閉所状況
参考|一般社団法人 日本建設業連合会「週休二日実現行動計画 2019 年度通期 フォローアップ報告書」を基に弊社作成

まとめ

働き方改革の一環として、他産業では2020年4月から時間外労働の罰則付き上限規制が適用されています。建設業には24年3月までの猶予期間がありますが、それまでに休日労働を含む時間外労働の削減に取り組む必要があります。
東京オリンピック・パラリンピックに関連した建設需要がひと段落したのちに、高齢者の大量離職も予想されており、若手の入職を促進するためにも週休二日・土日閉所は必須といえるでしょう。
日給月給の技能者にとっては、総収入の減少にもつながるため、年収維持のための労務単価の引き上げも必要です。適正な工期や請負代金への反映、生産性の向上などで達成を図ることになるでしょう。

関連記事

  1. リフォーム・リニューアル調査 (2020年度/令和2年度)

  2. 建設 決算

    建設業界主要企業の2022年3月期第2四半期決算(2021年7~9月期)

  3. 建設総合統計からみる業界動向

  4. pixta_34216575_M

    施工管理技術検定の合格者数

  5. 建設関連企業の倒産件数(2020年1~12月)

    建設関連企業の倒産件数(2020年1~12月)

  6. 建築物リフォーム・リニューアル調査から見る 市場の概況 (令和3年度/2021年度 第1四半期)