建設関連企業の倒産件数(2020年1~12月)

建設関連企業の倒産件数(2020年1~12月)

このレポートは、東京商工リサーチの「年間 全国企業倒産状況(2020年)」「後継者不在率調査(2020年)」「『後継者難』の倒産状況調査(2020年1-11月)」と、帝国データバンク「全国企業倒産集計(2020年報)」をもとに、建設業の倒産や要因についてまとめています。

概要
東京商工リサーチの「年間 全国企業倒産状況(2020年)」によると、2020年の建設業の倒産件数は1,247件で、過去30年で最少でした。
新型コロナウイルスの感染防止対策に関連した企業支援があり、安定した官公庁需要や通信インフラ工事である程度の発注量が確保されたことなどが要因とみられます。

2020年の倒産件数はバブル期なみの低水準

東京商工リサーチは、1月29日、2020年の全国企業倒産件数(負債総額1,000万円以上)を発表しました。
倒産件数は7,773件で、前年比7.2%減。建設業はそのうち16.4%を占めました。
負債総額は14.2%減の1兆2,200億円あまり。新型コロナ関連の資金繰り支援策にも支えられ、夏以降は前年同期を下回りました。
倒産件数が8,000件を下回ったのは30年ぶりで、1971年以降の50年では、バブル期の1989年に次ぐ、4番目の低水準でした。
また、大型倒産が減少し、小口化する傾向がありました。
新型コロナウイルス関連倒産は、累計で792件になりました。

①-1 倒産した企業の産業別構成比
参考|東京商工リサーチ「年間全国倒産状況」よりグラフ作成

産業別では、外出自粛に大きな影響を受けたサービス業が33.39%を占める最多で、巣ごもり需要の恩恵をうけた、スーパーや家電量販店、通販などの小売業は減少しました。

建設業の倒産件数と負債総額は過去30年で最小

東京商工リサーチによれば、建設業の2020年の倒産件数は1,247件で、昨年よりも13.64%減少しました。負債総額は1093億1500万円で、前年比25.33%減で、いずれも過去30年で最小でした。受注不信が多くを占め、後継者難などの人手不足関連の倒産は全体の1割弱でした。
ただ、新型コロナの影響で投資意欲が減退しており、設備投資計画の見直しや案件の先送りによる受注不振倒産が増える可能性があり、先行きは不透明です。

①-2 倒産件数と負債総額の推移参考|東京商工リサーチ「年間全国倒産状況」よりグラフ作成

帝国データバンク調べでは、ゼネコン、職別工事業は倒産件数が過去最少

帝国データバンクの「倒産件数調査」によれば、建設業の倒産件数は過去最少でした。
業種別では職別工事業と総合工事業(ゼネコン)で過去最少となりました。
件数は、最も多い職別工事業が550件(前年比4.5%減)、総合工事業が457件(同21.6%減)、設備工事業は259件(同1.6%増)でした。
職別・総合工事業では公共工事や通信インフラ工事の受注が堅調で、売り上げを下支えしたことなども、倒産が減少した要因とみられます。
※東京商工リサーチと帝国データバンクでは調査対象に差異があるため若干の数字の違いがあります。

①-3 建設業の倒産集計(業種別中分類)
参考|帝国データバンク「全国企業倒産集計2020年12月報・2020年報」より作成

建設業の「後継者難」倒産は、全産業で最多の78件、高齢化がリスク

東京商工リサーチによる「『後継者難』の倒産状況調査(2020年1-11月)」によると、2020年の倒産件数は低い水準にあるものの、代表者の高齢化が進み、後継者不在の「後継者難」倒産が急増しています。
特に建設業は、産業別で最多の78件(前年同期比69.5%増)で、後継者難倒産をした企業の2割強を占めました。
会社代表者の平均年齢は年々上がり、19年には62.1歳になっています。
代表者が高齢の場合、会社がひとたび経営不振に陥ると、同族継承や後継者育成が進みにくくなり、代表者の健康問題が起きたり、死亡してしまった場合に、事業承継を断念し、倒産や廃業の道を選ぶことになります。
全産業における後継者難倒産の要因別では、「死亡」が149件(前年同期比29.5%増)、「体調不良」が120件(同41.1%増)「高齢」が38件(同80.9%増)です。
建設関連の中小企業にとっては、代表者の高齢化は大いなる事業継続リスクと考えられます。

じわり上がる「後継者不在率」

東京商工リサーチによる「後継者不在率調査」によれば、建設業の会社で、後継者不在率は56.9%で、前年から1.95ポイント悪化しました。
後継者がいない会社は1万9,051社で、いる会社(1万4,432社)を4,619社上回っています。
建設業では、会社ぐるみで施工技術や現場のノウハウを継承していることもあり、会社が解散すると、そうした技術が失われてしまう恐れもあります。
全産業においては、経営者が80歳以上の会社の23.51%で後継者が決まっておらず、数年を要する事業承継において、早急に対応する必要があります。

③-1 産業別 後継者不在率
参考|東京商工リサーチ「2020年「後継者不在率」調査」より作成

③-2 産業別 後継者がある会社・ない会社
参考|東京商工リサーチ「2020年「後継者不在率」調査」より作成

まとめ

2020年は、全体の倒産件数こそ減ったものの、世相を反映して後継者不足による倒産が急増しました。
また、2021年には、さまざまな支援策で資金繰りをしてきた企業が、借り入れ金の返済期限を迎えます。長引くコロナ禍で収入が以前の水準まで戻らなかった場合、借り入れ金を返済することができず、倒産・廃業の引き金になる恐れがあり、しばらくは先行き不透明な状況が続きそうです。

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