建設業界主要企業の第3四半期決算 (2020年4~12月期)

建設業界主要企業の第3四半期決算 (2020年4~12月期)

今回のWAT REPORTでは、総合工事業(大手・準大手・中堅ゼネコン)と管工事、電気工事、通信工事サブコン、エンジニアリング専業、ユーザー系プラントエンジニアリングの主要各社の2021年3月期第3四半期(2020年4~12月期)決算について、各社の有価証券報告書、決算短信等に基づいて取りまとめました。

概況

建設関連企業における2021年3月期の第3四半期決算では、多くの大手企業が前年同期比で減収、受注高も減少傾向となるなど、全体的に厳しい決算となりました。
2020年東京五輪に向けた大型案件が竣工したことによる反動減に加え、新型コロナの影響による営業活動の制約もありました。一方で、通信工事サブコンは、通信キャリアの工事需要に加え、コロナ禍による通信関連の特需もあり、業績は好調でした。
21年1月の緊急事態宣言の再発令にともない、民間においては設備投資計画のさらなる見直しや凍結も起きており、少なくとも21年の前半までは、市況の低迷による投資控えや需要の減少が続くと予想されています。
海外では経済活動の制限が起こり、プラントや設備関連の工事に影響がありました。クーデターが起きたミャンマーをはじめ、海外のインフラや建築工事の受注が減少するなど波乱含みの第3四半期となりました。

大手ゼネコン4社の決算

大手ゼネコン4社の売上高は、倉庫やオフィスビルなどの建築事業が苦戦し、いずれの会社も減収しました。鹿島は土木関連の追加工事で採算が良化したので増益となりましたが、その他は純利益は前年同期比1.5~2割程度のマイナスとなり、厳しい決算となりました。

業績の前年同期比(大手ゼネコン)

建築は減少した一方、土木事業は公共工事が多く、建築事業ほど新型コロナの影響を受けていません。

手持ち工事高については、どこもおおむね前年と同程度に豊富であり、スムーズに着工できれば決算成績も安定すると見られます。

ただし、業績の先行指標となる受注高は4社ともに減少。手持ちの工事を消化したあとはわからず、大型工事の獲得競争による利益率の低下や、新型コロナの世界的な流行による企業の設備投資計画の見直し、受注の減少などを危ぶむ声もあります。

通期の業績予想は4社とも前回から据え置き、減収減益となる見込みです。

1.大手ゼネコン

2.大手ゼネコン_業績予想

準大手ゼネコン9社の決算

新型コロナ禍でも堅調な官庁工事に対し、民間建築の受注量の落ち込みがあり、減収が目立ちました。増収したのは2社で、うち1社は前田道路を子会社化した前田建設。前田は単体でも土木事業が好調でした。熊谷組は手持ち工事の順調な消化により売り上げが増加しました。

業績の前年同期比(準大手ゼネコン)

3.準大手ゼネコン

大型分譲マンション・都心部のホテル需要が頭打ちとなっているなかで、コロナ禍の影響は少なくないものと思われます。建築事業に強みのある会社は、民間企業の設備投資が回復するのを待つこととなります。

一方で、案件が豊富な官庁発注工事を主力とする会社では、さほど業績に変化がなかったケースもありました。

業績予想は3社が修正。前田建設は上方修正でした。

4.準大手ゼネコン_業績予想

中堅ゼネコン8社の決算

業績の前年同期比(中堅ゼネコン)

すべての会社で売上高が前年同期比マイナスになりました。前年並みか減少となっています。

利益面では前年同期比で増益が4社、減益が4社となりました。

5.中堅ゼネコン

業績予想を修正した会社のうち、銭高組は工事の採算が良化したことによる上方修正でした。残り3社は工事のスケジュール遅れなどで前回予想を下回り修正しました。

6.中堅ゼネコン_業績予想

電気工事サブコン8社の決算

業績の前年同期比(電気工事サブコン)

電気設備の設置・修繕工事を専門とする電気工事サブコンは、前年同期比で売上高が微減か、ややプラスの決算となりました。純利益は8社中5社がプラスとなり好調でした。

9.電気工事サブコン

受注においては、大型の建物の電気工事などでゼネコンの業績とも連動する場合があり、市況が悪化するとあおりを受けることもあります。

ただし、今回の決算では、新型コロナの影響が想定ほど大きくなかったとする会社も複数あり、電力会社との仕事で、一定の受注が確保されている面も強みとなりました。

業績予想では、きんでんが新型コロナの影響が想定より軽微だったことから上方修正しました。中電工は情報通信工事や配電線工事の売上が増加し、前回の数値を上回る予想です。

10.電気工事サブコン_業績予想

管工事サブコン10社の決算

管工事サブコンでは、決算を公開した10社のうち9社で売上高が前年同期を下回り、6社が減収減益となりました。新型コロナについて、おおむね直接的な影響は少ないとした企業もありましたが、民間企業の投資マインドの低下による小規模営繕工事の延期や中止が起きており、受注減の理由になっているようです。

業績の前年同期比(管工事サブコン)

7.管工事サブコン

業績予想では、高砂熱学工業が新型コロナの影響で、国内外の子会社ともに売上高や各利益の減少が見込まれ、予想を下方修正しました。三機工業も同理由により下方修正、テクノ菱和も建設工事の着工遅れや受注減により、前回公表値を修正しました。

8.管工事サブコン_業績予想

一方、朝日工業社は売上総利益率が改善し、上方修正となりました。

※日比谷総合設備は前年に営業損失があったためイレギュラーな数字

通信工事サブコン3社の決算

通信工事サブコンの2021年3月期は好成績で幕を閉じることになりそうです。

業績の前年同期比(通信工事サブコン)

2020年前半には、活動自粛や部材調達に支障が生じるなどで波乱含みのスタートとなりました が、蓋を開ければ、新旧キャリアの通信インフラに加え、第5世代移動通信システム(5G)サービスの拡大や、新型コロナの影響でオンラインイベントやテレワークが浸透、IoT機器が普及するなどで追い風が吹き、前年を上回る結果でした。

売上高は、3社中2社がプラスとなりました。コムシスHDは好調だった前年の反動減となりマイナスでした。純利益は3社ともプラスでした。

11.通信工事サブコン

業績予想を変更したのは2社でした。

協和エクシオは新型コロナの通信キャリア事業が好調で、大型案件の受注も伸びたことから、前回予想を上方修正、ミライトホールディングスは保有株式の売却にともない、当期純利益を上方修正しました。

12.通信工事サブコン_業績予想

エンジニアリング専業3社の決算

3社とも前年同期比で売上高が減少しました。原油価格の低迷で厳しい受注環境は変わらず、新型コロナによって世界経済が落ち込み、インフラ設備投資も減速しました。

業績の前年同期比(エンジニアリング専業)

13.エンジニアリング専業

海外プロジェクトで大型損失を計上した千代田化工、東洋エンジの2社は今決算も苦戦。日揮HDは不採算案件の減少で増益し、通期目標の8割強を達成しました。

エンジニアリング業においては、案件ごとに新型コロナの影響の度合いは異なります、しかし、案件によっては費用が膨張し、各社で減益の要因となりました。

オイルマネーに左右されやすい石油関連のプロジェクトのみならず、脱炭素化を受けた風力やバイオマス発電所など、再生可能エネルギー関連の受注に注力しています。

ユーザー系プラントエンジニアリング企業の決算

決算を公表している業種主力のレイズネクストにおいては、売上高は前年同期を上回りました。時期的に石油・石油化学関連でプラントの定期修理工事がピークに来ており、メンテナンスの進捗は順調としています。

当期純利益に関しては、前年同期に経営統合によるのれん発生益を計上しましたが、当期はこれがなくなり大幅減となっています。

14.ユーザー系プラントエンジニアリング企業

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