今回のWAT REPORTでは、管工事、電気工事、通信工事サブコン、エンジニアリング専業、ユーザー系プラントエンジニアリングの主要各社の2021年3月期(2020年度)決算について、各社の有価証券報告書、決算短信等 に基づいて報告しています。
管工事・電気工事サブコンは、新型コロナウイルスの感染拡大による企業の建設設備投資の手控えの影響を受け、ほとんどの大手で減収・減益の最終決算となりました。
一方、通信工事サブコンは、基地局の工事や5G関連工事などで好調な決算でした。
エンジニアリング企業は、海外の事情や、エネルギー需要の風向きの変化などから、減収が目立ちました。
目次
管工事サブコン10 社の2021年3月期(2020年度)決算
設備工事業のひとつである管工事サブコンは、ゼネコンの下請けとして、パイプ・ダクトなどの設置を専門としている企業です。ビルや工場、大型施設などの新築工事のほか、リニューアル工事も手がけます。
管工事サブコン大手の最終決算は、10社中9社が減収減益となりました。都市部では、オリンピックイヤーの前後で工事の端境期となっていたことに加え、企業が設備投資を圧縮したことで、各社の売り上げも減少傾向でした。
また、東南アジアをはじめとする海外でも、工事の中断や延期が起きて業績に影響しました。営業利益も日比谷総合設備を除いたすべての企業が減益しました。
2022年3月期の業績予想では、10社とも増収の見通し。
新型コロナウイルス感染症の影響については持ち直しの兆しがあるものの、ビルの建て替えやリニューアルなど、民間の設備投資意欲が減退し、パイの取り合いになるのではないかと警戒感を強めています。
人件費や一部の資材費も高騰しているため、利益面については慎重に判断する企業もあります。10社中5社が前年同期比マイナスになると見通しており、業態によっても明暗が分かれます。
電気工事サブコン8社の2021年3月期(2020年度)決算
電気工事業サブコンは、ゼネコンから、さまざまな建造物の送電線や分電盤、電灯、電気機器の設置などを請け負う専門工事業のひとつです。
電気工事サブコン大手の3月期決算では、電気設備工事の減少や発注遅れなどを要因に、8社中7社が減収しました。営業利益も5社が減益。苦戦する企業が目立ちましたが、各社は「スタッフや施工要員の機動的な配置や原価低減(関電工)」に取り組むなどで利益確保に努めました。
次期の業績予想でも、民間の設備投資で、案件の延期や凍結などが予想されており、利益面では7社中3社が減益、当期純利益では7社中6社が減益になると見通しました。
(関電工は新会計基準を採用したため、非表示となっています)
通信工事サブコン3社の2021年3月期(2020年度)決算
通信工事サブコンは、ゼネコンの下請けとして、建造物の電話や通信設備など、情報通信に関する配線や機器設置などを手がけています。
次世代通信規格「5G」に関連する基地局の工事や、データセンターの電気工事、高度無線環境の整備など、通信工事の需要は高く、3社とも業績を伸ばして増収増益となりました。特に、ミライトホールディングスは過去最高を更新しました。
次期の業績予想では、コロナ禍の経済は先行きは不透明だとしながら、「5Gサービスの本格展開、防災・減災、国土強靭化など公共インフラ投資、社会全体のデジタル改革に伴うICT投資、グリーン社会の実現に向けた再生可能エネルギー分野への投資拡大などが期待される(コムシス)」など、堅調な需要の支えがあり、各社は前年並みの収益を期待しています。
エンジニアリング専業3社の2021年3月期(2020年度)決算
エンジニアリングの会社では、製油所や化学プラントなどの設計、調達、建設などを担っています。
今期の決算では、東洋エンジと千代田化工が減収減益となりました。2社は海外プロジェクトで損失を計上し、経営再建中です。日揮ホールディングスも減収したものの、海外税額が大幅に減少し、増益で着地しました。
原油価格の低迷などでプロジェクトの延期が相次いでいますが、バイオマス発電などの再生可能エネルギー関連工事を請け負うなど、多角化を図って業績の向上を目指しています。
次期の業績では、東洋エンジが増収増益、千代田化工が減収減益と予想しました。
日揮は「新型コロナウイルスの収束とともにエネルギー需要は再び拡大し、顧客の設備投資も回復していくことを期待している」としました。
(日揮HDは新会計基準を採用したため、非表示となっています)
ユーザー系プラントエンジニアリング企業の2021年3月期(2020年度)決算
プラントメンテナンス、エンジニアリングサービスを行っているレイズネクストの最終決算は、増収減益で着地しました。(ユーザー系プラントエンジニアリング企業で、3月に決算発表をしている会社はレイズネクストのみ)。
同社は増収の要因について「新型コロナの影響に伴う設備投資の中止や延期の影響を受けたが、完成工事高については、主要顧客である石油・化学業界において定期修理工事が多い年であり、堅調に推移した」と説明しています。
当期純利益は、経営統合で発生した負ののれん発生益を計上した結果、前期比で大幅に減少しました。
次期の業績は、自社が受注する定期修理工事が少なくなるため、減収減益と予想しています。
まとめ
2021年3月期(2020年度)は、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、民間企業が建設設備投資を手控えました。これにより、サブコンの中でも建築工事の比率が多かった企業で、決算に影響がありました。
海外でも工事の中断や延期が起こり、海外受注に注力していたサブコンは足をすくわれた形となりました。業態によって明暗の分かれた年であったとも言えます。
来期には新型コロナも沈静化すると多くの企業が予想しており、延期になっていた工事のプラス効果も期待されています。