今回のWAT REPORTでは、総合工事業(大手・準大手・中堅ゼネコン11社)と管工事、電気工事、通信工事サブコン、エンジニアリング専業、ユーザー系プラントエンジニアリングの主要各社の2021年3月期第1四半期(2020年4~6月)決算について、各社の有価証券報告書、決算短信等に基づいてレポートを取りまとめました。
▮概要
2021年3月期第1四半期は、東京オリンピック・パラリンピック関連の大型案件が終了したため、関連工事を手がけていたゼネコン、電気・管工事サブコンなどの業種で、決算にマイナスが目立ちました。絶好調だった前期の反動があった上に、各社が一斉に新しい案件との端境期を迎えたことから、業績予想も低水準となりました。
受注面では、官公庁関係の工事が底堅く推移するも、新型コロナウイルス感染症による景気の不透明感により、民間企業の建設設備投資が弱含みました。
社会状況としては、新型コロナウイルスの感染者が急増したため、2020年4月から5月上旬にかけて緊急事態宣言が発令され、一部の作業所で閉所を余儀なくされました。ただし、期間は10日程度と短期だったため、関連企業の業績面にはそれほど大きな影響はないとされています。
ゼネコン・設備系のサブコンとも、コロナウイルスの影響はあくまで限定的であるとの見方が強いものの、7月には緊急事態宣言時よりも多くの感染者が出るなど終息の見通しが立っておらず、状況は予断を許しません。
海外では、シンガポールなど一部の国で、規制強化により現場再開に遅れが出ているものの、ほとんどの国では徐々に工事が再開しています。
目次
大手ゼネコン4社の2021年3月期第1四半期決算
大手ゼネコンは4社中3社で減収営業減益でした。東京オリンピック・パラリンピック関連の大型案件が一巡し、5年ぶりの低水準となりました。鹿島建設は開発関連で大型物件の引き渡しがあり、売上げ、利益ともに大幅なプラスでした。
今期の業績については、案件の端境期であることに加え、新型コロナウイルスの感染拡大の影響なども考慮に入れた結果、4社とも収益ともに厳しい予想となりました。ただし、受注環境は一定の水準を維持するとの見通しがあり、新たな工事の受注により期末時点で予想を上回る可能性もあります。
参考|各社の有価証券報告書、決算短信等に基づいて作成
準大手ゼネコン10社の2021年3月期第1四半期決算
準大手ゼネコンの決算も、多くは案件が施工の端境期にあることなどから、10社中7社が減収、7社が営業減益となりました。業績見通しでは、前田道路のグループ会社化で売上が増加する見通しの前田建設工業以外は、ほぼ横ばいか減収とし、全ての会社で純利益は大幅なマイナス予想となりました。
参考|各社の有価証券報告書、決算短信等に基づいて作成
中堅ゼネコン11社の2021年3月期第1四半期決算
中堅ゼネコンでも、9社中6社が前年を下回り減収となりました。売上予想は、軒並み横ばいか減収で、当期純利益は全ての企業でマイナスになると予想しています。
参考|各社の有価証券報告書、決算短信等に基づいて作成
電気工事サブコン8社の2021年3月期第1四半期決算
電気工事サブコンの決算は、いずれも比較的堅調に推移しました。8社中5社が前年同期比で減収、当期純利益は5社が減少しました。中電工は屋内電気工事や空調管工事の増加に加え、昭和コーポレーションの再連結により増収となりました。
通期予想では、電力会社向けの工事は例年並みの受注環境になると見ていますが、建設需要の減退に加え、新型コロナウイルス感染症の影響で設備投資の中止や先送りがあると予測し、5社が2ケタ台の減益と厳しく見通しています。ユアテックと日本電設工業は、いずれも未定としました。
参考|各社の有価証券報告書、決算短信等に基づいて作成
管工事サブコン6社の2021年3月期第1四半期決算
管工事サブコンは、6社中5社が前年同期を下回り減収。本業の利益を示す営業利益も、前年度赤字で比較できない2社以外の3社が減益となりました。ダイダンは完成工事高の増加と完成工事利益率の上昇により、業績好調でした。
通期の業績は、いずれの会社も減収を見込み、営業・経常・純利益のすべてで大幅な減益が予想され、経営環境は厳しい見通しです。
参考|各社の有価証券報告書、決算短信等に基づいて作成
通信工事サブコン3社の2021年3月期第1四半期決算
通信工事サブコンは3社中2社が前年同期を上回る大幅な増収増益となりました。通信キャリアなどの底堅い需要を背景に、順調に売上げました。
コムシスホールディングスは、コロナウイルス感染症の影響により、受注機会が減少したことに加え、現場の立ち入り制限や材料調達の遅れによる工期延伸が足かせとなり、減収減益となりました。
参考|各社の有価証券報告書、決算短信等に基づいて作成
エンジニアリング専業3社の2021年3月期第1四半期決算決算
売上高は3社中3社が前年同期を下回り、営業利益は2社が減収しました。
東洋エンジニアリングは、コロナウイルス問題などで、プラント分野の投資計画の見直しや遅延があったため、業績に影響が出たとしています。
通期見通しは3社とも減収営業減益の予想です。
参考|各社の有価証券報告書、決算短信等に基づいて作成
ユーザー系プラントエンジニアリング企業1社の2021年3月期第1四半期決算
ユーザー系プラントエンジニアリング企業のうち、決算を公表したレイズネクストは売上・利益面のいずれも好調で、増収増益となりました。石油・石油化学プラントの定期修理工事がピークを迎えることに加え、投資目的の化学プラント建設などで受注拡大を目指して営業活動に注力するとしています。
参考|各社の有価証券報告書、決算短信等に基づいて作成