令和2年度 建設投資見通し

建設投資見通しR2

このレポートでは、「建設投資見通し(2020年度)」をもとに、国土交通省の発表した、2020年度の建設投資の予測額についてお伝えします。
概要
2020年度の建設投資額は、63兆円あまりとなる見通しです。
政府投資は昨年を上回り、過去10年で最高の水準となった一方で、全体の6割を占める民間投資は6.5%減少しました。需要が一巡したことに加え、新型コロナウイルスの感染拡大による影響もあったと考えられます。

2020年度の政府・民間それぞれの建設投資額は?

日本の建設投資額は1992年の84兆円がピークで、2010年には41兆円まで半減しました。その後、東日本大震災の復興や都心再開発、東京オリンピック・パラリンピック関連需要などで回復傾向となり、17年からは毎年60兆円以上の規模の建設投資があります。
2020年度の建設投資見通し(名目値)は、前年度比3.4%減の63兆1600億円で、6年ぶりに減少となったものの、過去10年間で見れば3番目に高い水準となる見込みです。
2-1 建設投資の推移(名目値)
参考|国土交通省 「令和2年度建設投資見通し
政府・民間の内訳では、政府投資が25兆6200億円(前年度比3.1%増)、民間投資が37兆5400億円(前年度比7.3%減)でした。
政府投資においては、過去10年で最高水準となる見込みで、6年連続増加しました。民間では都心部の再開発やオリンピック・パラリンピックに向けた投資が一巡したことに加え、新型コロナの影響による投資の停滞があり、5年ぶりに減少する見通しです。

2020年度の建設投資における土木と建築の構成比は?

投資元の内訳では、政府投資が4割、民間が6割の構成比でした。
投資内容では、3割が政府の土木投資、4割が民間建築投資で、全体の7割を占め、建築関連の工事が多いリニューアル投資も、民間が多かったことがわかります。
2-10 建設投資の構成比(2020年)
参考|国土交通省 「令和2年度建設投資見通し
建築・土木・リニューアル別では、建築投資が5割、土木投資が4割、リニューアル工事が1割でした。

2020年度の建築工事における投資額は?

建築投資額は38兆3061億円となる見通しです。過去10年のうち2017年からの3年間は40兆円規模の建築投資がありましたが、20年には3年前の水準に戻るとされています。内訳では、住宅が15兆6900億円、非住宅が14兆7600億円で、非住宅の建設投資のうち、民間が10兆5800億円、政府が4兆1800億円でした。
2-3 建築投資の推移(名目値)
参考|国土交通省 「令和2年度建設投資見通し

建築補修(改装・改修)工事によるリニューアル投資額は、7兆7000億円でした。4年ぶりに減少しましたが、2015年に統計が始まって以来3番目に高い水準となる見通しです。

2-4 リニューアル投資の推移(名目値)
参考|国土交通省 「令和2年度建設投資見通し

2020年度の土木工事における投資額は?

土木投資額は過去10年で最高の25兆0100億円となる見通しです。2020年は防災・減災、国土強靭化政策が強化され、政府としても過去10年で最高になりました。民間投資は減少しました。
2-2 土木投資の推移(名目値)
参考|国土交通省 「令和2年度建設投資見通し
21年度には、新型コロナで冷え込んだ景気対策を含め、経済波及効果が大きいとされる官の公共工事への投資が注目されます。12月中旬、政府は「防災・減災、国土強靭化のための5カ年加速化対策」として、2021年から5年間で、15兆円程度の規模の災害対策費用を確保すると閣議決定しました。つづいて補正予算においても、国土強靭化に関して、事業費ベースで3兆4963億円(国費ベースで2兆2600億円)が追加計上されています。21年度予算では災害対策は別枠も設けられているため、積み増しされる可能性もあります。

*注
国費ベースとは国が100%出資する事業に限って算出した予算。事業費ベースでは、これに地方への補助金が加わる。

GDPに占める建設投資について

近年の建設投資はGDPの1割程度の水準で推移しています。
2020年のGDPの名目成長率は、新型コロナの影響により、4-6月には前期比でマイナス28.1%(年率換算)に急落しました。
7-9月には改善したものの、前年並みの水準には戻らず、先行き不透明です。特に企業の設備投資・住宅投資は落ち込んでおり、しばらくは同じような状況が続く可能性があります。
1-1 GDP名目成長率(四半期ごと名目値)
参考|内閣府 「国内総生産(支出側)及び各需要項目」(内閣府・2020年7−9月期2次速報)
2-5 GDPと建設投資の推移(名目値)
参考|国土交通省 「令和2年度建設投資見通し

*注
年率換算では1期のポイントを1年分に計算しなおしているため、振れ幅がより大きく見えることがあります。

日本における過去の建設投資

政府による建設投資の集計が始まった1960年には、建設投資額2兆5078億円の7割程度を民間投資が占めていました。なかでも建築投資が全体の5割を超え、7081億円が住宅投資、8349億円が非住宅投資でした。
2-7 建設投資の構成比(戦後:1960年)
1965年からは、住宅投資が非住宅投資を上回るようになります。
やがて「土建国家」ともいわれるようになった日本は、1975年頃にGDPの20%以上を建設投資が占めるようになります。その後割合は一旦低下したものの、バブル期には再度増加。90年にはGDPの81兆円あまりを官民の建設投資が占めていました。この頃はまだ、民間投資が全体の6割を占めていました。
2-8 建設投資の構成比(バブル期:1992年度)
バブル期が終わると民間投資の割合は低下し、政府の土木投資の割合が増加。現在は全体の4割程度で推移しています。
2-9 建設投資の構成比(リーマンショック後:2010年)
2-10 建設投資の構成比(2020年)
参考|国土交通省 「令和2年度建設投資見通し

まとめ

我が国の建設投資は、長期的に見ると少子化を背景に緩やかな縮小フェーズに入ると見られていますが、政府投資は、国土強靭化政策に基づき、当分の間、一定量が確保される見通しです。
民間投資においては、新型コロナの影響で落ち込んではいるものの、テレワークやECサイトを利用した消費行動の増加など、「ニューノーマル」といわれる新しい生活様式も浸透しつつあり、新たな設備投資の期待もあります。
業界としては深刻な人手不足問題に直面しているため、需要があっても施工できない状況に陥る前に、働き方改革や生産性向上への対応が求められます。

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