2020年上期の大手ゼネコン受注動態

2020年上期の大手ゼネコン受注動態

今回のWAT REPORTでは、国土交通省総合政策局が発表した『建設工事受注動態統計』をもとに、9月の国内大手ゼネコンの受注高をとりまとめました。
※受注高は、建設会社にとっては売上に直結する数字であり、投資意欲の先行指標ともとれるものです。動態調査は毎月実施・公表されているもので、国の施策の基礎資料などに活用されています。

概況
新型コロナウイルスの感染症拡大以降、国内の景気は4~5月に底を打ち、9月には政府が「持ち直しが見られる」との判断を示しました。
将来不安などで個人消費や設備投資などの実体経済が弱ぶくむ中で、財務省の法人企業景気予測(7~9月期)によると、2020年度の設備投資額は、前年度比6.8%減となる見通しです。
一方、2020年9月の工事受注統計においては、土木工事が大きく増加し、民間工事が減少しました。

2020年9月の建設工事の受注高は前年並み

国土交通省の9月の建設工事受注動態統計(速報)によると、建設工事の9月の受注総額は、7兆8529億円で、前年と同じでした(正確には前年同月比0.02%増)。
内訳では土木工事の受注が大きく増え、建築工事が減りました。
土木工事では、政府投資が大きな割合を占めています。9月の受注額は1兆8269億円(前年同期比17.3%増)と、前年に比べて大幅に増えました。
一方、民間投資の大半を占める建築工事では、投資額が3兆1319億円(同4.9%減)と18ヶ月連続で減少を続け、縮小傾向となっています。
機械装置等工事は4779億円で、微減したものの例年なみの受注額でした。
③202009_工事種別受注高推移
参考:国土交通省|建設工事受注動態統計調査(9月分)記者発表資料

受注先は公共機関が1割増、民間は減少傾向続く

工事全体のうち、(発注工事量に近い数字の)9月の元請受注高は、前年同月比1.8%増の5兆4366億円でした。大きな増減はなく、建設業において一定水準の市場規模が保たれてい流ことがわかります。
発注者別に見ると、公共機関からは、同12.4%増と大幅に増加し、1兆9709億円となりました
民間等からの受注は同3.4%減の3兆4657億円で、先月は一旦増加したものの、再び減少に転じました。民間発注の減少分を、公共発注が下支えしています。③202009_元請受注高推移
参考:国土交通省|建設工事受注動態統計調査(9月分)記者発表資料

また、受注した企業を業種別にみると、総合工事業(ゼネコン)が緩やかな増加傾向(前年同期比3.9%増の4兆1286億円)を示しているのに対し、設備工事業は4ヶ月連続で減少傾向(同4.7%減の1兆526億円)となりました。
土木・建築の両方を手がけるゼネコンと比較すると、設備工事業はより鮮明に、民間設備投資の手控えに影響を受けていると理解できます。

ゼネコン大手50社でも民間が減少

国土交通省総合政策局の発表した、ゼネコン大手50社の受注調査結果によると、9月の受注総額は1兆2429億円(前年同月比10.6%減)でした。
※大手50社は年間完成工事高が大きい建設業者50社を指定し、国内と海外での受注高などを調査しています。大手50社に指定されている企業は、1985年4月以降固定されています。

公共工事は国・地方ともに大幅に増加

9月の公共工事は、3235億円で、前年同月比28.2%と8ヶ月連続で増加しました。
特に、国の機関が17.4%増であるのに対し、地方の機関は52.7%増となっています。
工事の種類別では、建築・土木共に増加。
事務所・庁舎・教育、研究、文化施設・治山治水などは減少し、道路、土木その他、工場・発電所の工事が増加しました。
①大手50社_民間・国・地方機関_受注総額推移(国・月次)_2
参考:国土交通省|建設工事受注動態統計調査(大手50社 令和2年9月分)
①大手50社_民間・国・地方機関_受注総額推移(地方・月次)_2
参考:国土交通省|建設工事受注動態統計調査(大手50社 令和2年9月分)

民間工事は製造業が増加し、非製造業が減少した

9月の民間工事は、製造業が前年同月比2.9%増だったのに対し、非製造業は同22.0%減で、合わせると対前年同月比17.0%減少しました。
増加した産業には、運輸・郵便業、情報通信業、金融業、保険業など、コロナ禍において需要が増えた業種や、比較的影響の軽微な業種が含まれています。
工事を種類別に見ると、住宅・倉庫・流通施設・店舗などが減少しています。教育・訓練・文化施設、事務所・庁舎、鉄道などは増加し、公共性の高い建物に、工事の需要があったようです。
海外は6ヶ月連続で大幅に減少。95億円(対前年比73.5%減)で、6ヶ月連続となりました。
①大手50社_民間・国・地方機関_受注総額推移(民間・月次)_2
参考:国土交通省|建設工事受注動態統計調査(大手50社 令和2年9月分)

まとめ

東京五輪に向けた工事が完了し、民間の建築工事は端境期と言われていました。新型コロナの影響もあり、先行きのへ不安から、しばらくは大型の設備投資を差し控える企業が増えそうです。
公共工事については発注量が増えており、防災・減災対策については重要度の高い施策であるため、公共工事の予算も確保しやすく、政府が景気対策の一環としてさらに追加する可能性も考えられます。

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