今回のWAT REPORTでは、国土交通省が公表した「設備工事業に係る受注高調査結果(2020年度)」をもとに、2020年度の設備工事業の受注高や、受注の内訳などについてレポートしています。
目次
2020年度の設備工事業者の受注高は、3兆1,367億円、前年度より8.1%減
国土交通省の「設備工事業に係る受注高調査結果」は、「電気工事」「管工事」「計装工事」の受注高を把握することを目的に、日本電設工業協会の主要20社、日本空調衛生工事業協会の主要20社、日本計装協会の主要20社の受注に関する調査結果を、取りまとめています。
参考|国土交通省「令和3年3月分(速報)設備工事業に係る受注高調査結果 (各工事主要20社)」
これによると、令和2年度(2020年4月~21年3月)の設備工事業者全体の受注高は、3兆1,367億円で、前年度比8.1%減となりました。好調だった前年の反動減にくわえ、新型コロナウイルスの影響による投資控えなどが要因として考えられます。
「電気工事」「管工事」「計装工事」が、設備工事業の受注高全体のうち、どれくらいの割合を占めているのかを見ていきます。
参考|国土交通省「令和3年3月分(速報)設備工事業に係る受注高調査結果 (各工事主要20社)」
各工事業の貢献度を円グラフにしてみると、2020年度には電気工事が1兆5,571億円で全体の5割、管工事が1兆4,022億円で4割、計装工事が3,562億円で、全体の1割程度でした。
割合にすると、5:4:1になります。
電気工事業全体の受注高は前年度比12.0%減の1兆5.571億円
2020年度の電気工事業者の受注高(元請け+下請け受注高)は、前年度比12.0%減の1兆5.571億円、元請け比率は44.6%でした。
民間元請け受注高が減少した一方、公共工事の元請け受注高は増加しました。元請け受注比率は、過去6年で最も低い44.6%で、元請け受注における民間比率は88.4%まで減少ました。
参考|国土交通省「令和3年3月分(速報)設備工事業に係る受注高調査結果 (各工事主要20社)」
2020年度の管工事業全体の受注高は、前年度比1.4%減の1兆4,023億円
管工事業者の受注高の合計は、前年度比1.4%減の1兆4,023億円で、2年連続の減少となりました。元請け比率は41.8%で、電気工事よりもやや低く、データは例年通りで推移しています。
公共機関、民間からの元請け受注高は減少し、4,844億円。元請け比率はやや下がって、41.8%となりました。
参考|国土交通省「令和3年3月分(速報)設備工事業に係る受注高調査結果 (各工事主要20社)」
2020年度の計装工事の受注高
2020年度の計装工事業者の受注高は、前年度比0.4%減の3,563億円で着地しました。受注高の減少幅は前年度よりも小さく、ほぼ前年と変わらない安定した推移でした。公共・民間ともに元請け受注高が増加し、元請け比率も微増しました。
参考|国土交通省「令和3年3月分(速報)設備工事業に係る受注高調査結果 (各工事主要20社)」
2020年、電気工事業・管工事業・計装工事業の手持ち高と施工高の推移
手持ち工事高は、売上高の先行指標で、契約済み工事のうち、未着手の部分に当たる金額を表します。「設備工事業に係る受注高調査結果」においては、手持ち工事高・施工高の発表は1ヵ月遅れとなるため、本レポートでは10~12月までの数字を掲載しています。
2020年4~6月の電気工事業者の手持ち工事高は、12.9%減の9,830億2200万円と前年を下回りましたが、7~9月には1兆1,393億7,600万円まで回復し、10~12月にもほぼ同水準でした。好調だった前年に引き続き、安定的に手持ち工事高が積み上げられていることがわかります。
参考|国土交通省「令和3年3月分(速報)設備工事業に係る受注高調査結果 (各工事主要20社)」
続いて、2020年の電気工事業者の施工高の推移を見ていきましょう。施工高とは、契約済みの建設工事の請負金額のうち、施工が終わった部分に相当する金額のことです。
2020年の電気工事業者の施工高は、4~6月に前年同期比5.0%増の3,549億0,900万円でした。7~9月には3,676億9,200万円、10~12月は3,638億1,400万円と2カ月の施工高は、前年同期比でやや低めとはいえ、全体的には堅調に推移しました。
参考|国土交通省「令和3年3月分(速報)設備工事業に係る受注高調査結果 (各工事主要20社)」
管工事業の手持ち工事高と施工高の推移
2020年の管工事業者の手持ち工事高は、ほぼ前年と同程度の量を保って推移しています。4~6月には前年同期比7.6%減の1兆2,539億9,500万円と微減しましたが、7~9月には1.2%増の1兆3,496億7,700万円、10~12月には1.1%減の1兆2,858億6400万円と、管工事業では、ほぼ前年と変わらない水準で、工事量が確保できている様子がわかります。
参考|国土交通省「令和3年3月分(速報)設備工事業に係る受注高調査結果 (各工事主要20社)」
一方、管工事業の2020年の施工高は、4~6月に前年同期を大きく下回り、前年同期比23.3%減の2,329億0,500万円となりました。7~9月の施工高も13.8%減の3,235億3,800万円と、前年を下回りました。10~12月には3.0%減の2,959億2,700万円で、ほぼ前年並みの施工高でした。
参考|国土交通省「令和3年3月分(速報)設備工事業に係る受注高調査結果 (各工事主要20社)」
計装工事業の手持ち工事高と施工高の推移
2020年の計装工事業者の手持ち工事高を見ると、前年同期比では微減しているものの、大枠で見れば前年に引き続き、安定的な工事量を確保できていたことがわかります。4~6月の手持ち工事量は、前年同期比6.9%減の1,101億2,800万円、7~9月には4.3%減の1,161億1,700万円、10~12月は3.6%減の1,057億7,700万円でした。
参考|国土交通省「令和3年3月分(速報)設備工事業に係る受注高調査結果 (各工事主要20社)」
また、2020年の計装工事業の施工高を見ると、4~6月には前年同月を9.5%上回り、503億0,400万円となりました。しかし、7~9月には11.6%減の502億0,700万円、10~12月には15.9%減の473億3,000万円と、好調だった前年よりやや低い水準で推移していると言えます。
参考|国土交通省「令和3年3月分(速報)設備工事業に係る受注高調査結果 (各工事主要20社)」
まとめ
2020年度の各工事業の受注高を見ると、東京五輪・パラリンピックを控え「建設バブル」とまで言われた2019年と比べると、一息ついた感もあります。
とはいえ、各工事業とも手持ち工事高はまだ豊富にあることから、しばらくは安定した経営環境で、堅調な成長路線を歩んでゆくのではないかと考えられます。