今回のWAT REPORTでは、国土交通省の「設備工事業に係る受注高調査(7月~9月)」をもとに、2020年第2四半期(7月~9月期)の設備工事業の受注高の推移についてお伝えします。
概況
新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)感染拡大を受け、元請け受注案件の工事を中断するなどの動きがあった第1四半期。今期は発注部門の再開などで受注活動が徐々に活発化したこともあり、ゆるやかな回復傾向が見られました。
目次
8月には前年並みに戻るも、9月には再び微減
2020年第2四半期の設備工事業の受注高は、期初では4月~6月に続き前年同期を下回りましたが、8月には一旦回復して前年同期比プラスとなり、9月も堅調に推移しました。
●7月の設備工事業の受注高 2,146億円(-242億円) うち元請け工事 985億円 民間工事 1,974億円(うち元請け862億円) 官公庁工事 172億円(うち元請け123億円) |
●8月の設備工事業の受注高 3,592億円(+58億円) うち元請け工事 1,147億円 民間工事 2,021億円(うち元請け915億円) 官公庁工事 366億円(うち元請け232億円) |
●9月の設備工事業の受注高 3,592億円(-120億円) うち元請け工事 1,386億円 民間工事 3,259億円(うち元請け1,139億円) 官公庁工事 332億円(うち元請け246億円) |
工事種別の月ごとの推移
7月は電気工事の民需が比較的好調、管工事は2割弱の落ち込み
7月の受注高を工事の種類別に分けてみると、比較的良好だったのが電気工事で、民間需要が1000億円程度あり、前年同期をわずかながら上回りました。
一方、管工事は全体的に不調で前年同期比19.3%マイナス、計装工事は民需が不調で16.7%のマイナスでした。
参考:政府統計の総合窓口(e-Stat)|設備工事業に係る受注高調査 に基づき作成
8月は管・計装工事が良化、電気工事は微減
8月は2020年度で初めて設備工事業全体の受注高がプラスに。管・計装工事では民需が良化し、官公庁受注も前年同期比でプラスでした。
好調だった電気工事の民需が弱含みましたが、官公庁受注が下支えし、ほぼ前年並みに収まりました。
参考:政府統計の総合窓口(e-Stat)|設備工事業に係る受注高調査 に基づき作成
9月は全体的に堅調、やや悪化も
9月は軽装工事の民需が落ち込み、管工事の官公庁需要も減少しました。電気工事はほぼ前年並みに落ち着きました。
参考:政府統計の総合窓口(e-Stat)|設備工事業に係る受注高調査 に基づき作成
設備工事の8-9割は民間からの受注
建築工事に付随した工事が多いこともあり、設備工事の受注元の8-9割は民間企業となっており、第二四半期においては、最も割合が高かった7月で、92.3%が民間からの受注でした。
民間受注が多いことから、設備工事業は市況の影響を受けやすく、今期は大都市圏を中心とした工事の端境期であったことの他、取引先の業種によっては、コロナ禍による設備投資計画の変更などが影響した企業も多かったのではないかと考えられます。
新型コロナについては、受注面への長期的な影響が懸念されますが、一方で医療機関における換気関連の気流調整工事など、新型コロナを前提とした新たな受注提案の可能性も生まれ、第5世代通信規格(5G)関連工事やEC用の物流施設、サテライトオフィスの増設など、新たな市場ニーズも出てきています。
参考:政府統計の総合窓口(e-Stat)|建設工事受注動態統計調査 に基づき作成
参考:政府統計の総合窓口(e-Stat)|建設工事受注動態統計調査 に基づき作成
参考:政府統計の総合窓口(e-Stat)|設備工事業に係る受注高調査 に基づき作成
まとめ
新型コロナは業種によって影響度が違うため、取引先の業種によって明暗が分かれた部分もあったようです。
受注の獲得と合わせて、採算性などのリスク管理や、提案力の強化、生産性の向上などで、経営の安定化を図る流れが強くなっています。