住宅・非住宅のリニューアル統計(令和元年度1~3月期)

住宅・非住宅のリニューアル統計(令和元年度1~3月期)

今回のWAT REPORTでは、国土交通省「建築物リフォーム・リニューアル調査(令和元年度1~3月期)」の結果をもとに、4月以降の新型コロナウイルス感染症の影響が顕著になる前の時期における、リニューアル投資市場の状況についてお伝えします。

▮概況
社会の変化にともない、建物のリニューアル投資が注目されています。非住宅分野のリニューアル工事に関しては、緊急事態宣言発令前の3月までは、ほぼ例年並みか、それ以上の需要があったことが読み取れます。

※このレポートが参考にした国土交通省「建築物リフォーム・リニューアル調査」は、建設業許可業者5,000者に対して実施し、半年ごとに結果を公開しているものです。資料における「リニューアル」とは、今ある資産(建物や土木構造物など)の補修・改修ではなく、より積極的な投資としてのリニューアル(耐震改修や、省エネ改修、設備リニューアルなど)のことを指します。
※※建築物のリフォーム・リニューアルは、建設投資全体の約20%を占めています。

コロナ前のリニューアル工事の受注高は?

コロナ直前の令和元年度1~3月のリフォーム・リニューアル工事の受注高の推移を見ると、非住宅のリニューアル工事件数は第2、第3四半期で減少したものの、当期で再び増加に転じており、全体としては水準を保ちつつ増加傾向にあることがわかります。

1住宅・非住宅別リニューアル工事の受注高推移
一方で住宅のリニューアル工事は過去2年間の水準から減少し、前年同期比では25.8%減と大幅に減少しました。

2受注高と前年同期比

参考|国土交通省:建築物リフォーム・リニューアル調査報告(令和元年度第4四半期受注分、令和元年度計)

コロナ前のリニューアル工事の種類別受注件数と受注高

非住宅・住宅の項目別受注件数では、非住宅は改装・改修、修理・維持工事の受注高が2兆4,607億円、前年同期比9.0%の伸びでした。受注件数は減少していることから、1件あたりの受注額が大きかったことを示しています。また、一部改築工事は、前年の2倍以上の受注件数があったにもかかわらず、受注高は42.7%減少しました。1件あたりの受注額が小さかったことがわかります。
住宅では、全体の3分の2を占める維持・修理において、受注件数が増加したものの、受注高は伸びず、住宅全体でも受注高が25.8%減となりました。
リニューアル全体では、受注件数が13.9%増、受注高は2.5%減となりました。

3工事種類別 受注件数・受注高

参考|国土交通省:建築物リフォーム・リニューアル調査報告(令和元年度第4四半期受注分、令和元年度計)

非住宅建築物を業種別に見ると、建築工事業のリニューアル受注件数は、前年からあまり変化がなく、件数は23万6,001件(前年同期比1.9%減)、受注高は7,917億円(同15.0%増)でした。

4非住宅建築物の業種別受注件数と受注高

参考|国土交通省:建築物リフォーム・リニューアル調査報告(令和元年度第4四半期受注分、令和元年度計)

設備関係では、管工事業の受注件数が14万1,898件(前年同期比17.6%減)、受注高が3,365億円(6.3%減)で、どちらも減少したものの、1件あたりの受注金額は増加傾向でした。電気・機械器具設置工事業は、23万0534件受注(同46.3%増)し、受注高も4,243億円(16.9%増)と、前年に比べ大幅に増加しました。これが貢献し、全体のリニューアル工事市場は、件数・受注高ともに前年なみの水準を保っていたことがわかります。

※「調査対象者」は調査回ごとに増減します。
※※職別工事業とは、「総合工事業」「設備工事業」とは別の、下請けとして工事を請け負う職人的な仕事という意味です。塗装や防水、石工、板金などの幅広い工事業が含まれます。

非住宅リニューアル工事の市場分析

新型コロナ感染拡大前の段階で、1~3月の非住宅建築物のリニューアル受注は、前年よりも1割程度増えていたことがわかっています。


非住宅リニューアル市場を詳しくみると、感染拡大直前の1~3月には、コンクリート系構造物のリニューアル工事で1兆2080億円、鉄骨造(重量鉄骨造、軽量鉄骨造)のリニューアル工事で7,443億円を受注していました。

5非住宅建築物の受注高

参考|国土交通省:建築物リフォーム・リニューアル調査報告(令和元年度第4四半期受注分、令和元年度計)


コンクリート系では、バブル期の終わりを迎える1981年から1990年近辺の建築物のリニューアル需要が多く、その年をピークに需要が山形に分布しています。
鉄骨造では、比較的新しい2011年以降の建築物が多く、築年数が多くなるにしたがって減少しています。

6非住宅建築物の建築時期と構造別受注高

参考|国土交通省:建築物リフォーム・リニューアル調査報告(令和元年度第4四半期受注分、令和元年度計)


発注者の比率は民間企業等からが最も多く、次に多かった公共工事の約4倍でした。
内訳は、民間の改装・改修が1兆3730億円(12.3%増)、維持・修理は4,149億円(4.0%増)でした。公共工事では改装・改修工事の受注が3,516億円(34.1%増)と大幅に増えました。

7非住宅建築物の発注者、工事種類別 受注高

参考|国土交通省:建築物リフォーム・リニューアル調査報告(令和元年度第4四半期受注分、令和元年度計)


リニューアル工事の目的としては、劣化部位や壊れた部位の更新・修繕が圧倒的に多く、ほぼ前年並みで全体の8割程度を占めました。
このほか、昨今の省エネ化にともない、省エネルギー対策工事が大幅に増え、前年の約2.5倍の6万5,824件の受注がありました。用途変更の需要も多く、耐震性向上にまつわる工事も増加しました。一方、屋上緑化や壁面緑化は調査の上では0件でした。

8工事目的・主たる工事目的別 受注件数

参考|国土交通省:建築物リフォーム・リニューアル調査報告(令和元年度第4四半期受注分、令和元年度計)


受注したリニューアル工事の受注件数の部位別の内訳は、建築が39万8,006件、設備が51万4422件と、設備の方が多く、どちらも件数は前年とほぼ同じでした。
建築では内装改修が15万2,490件と最も多く、2番目の建具の2倍の受注件数でした。このほか、屋根、外壁工事でも前年並みの受注がありました。
設備では電気設備のリニューアル工事が最も多く、件数も前年同期比31.6%増加しました。空調設備のリニューアルは10万9670件でほぼ前年並み、給排水衛生器具設備のリニューアルは10万4455件(34.6%減)で減少しました。

9建築・設備の主たる工事部位別受注件数

参考|国土交通省:建築物リフォーム・リニューアル調査報告(令和元年度第4四半期受注分、令和元年度計)

まとめ

新型コロナウイルスの感染拡大直前の1~3月の非住宅のリニューアル工事の受注は、東京五輪関係の需要にはそれほど左右されず、ほぼ前年並みだったことがわかります。
一方で、住宅系は減少傾向が続きました。
緊急事態宣言の発令後は、在宅勤務などの増加で、長期的には住宅のリニューアル需要が伸びるのではないかという見方もありますが、過渡期に当たる次期では、様子見のため発注減となる可能性もあり、長期的には、経済の冷え込みによる需要の減少も考えられます。
一方で、国土交通省の政策をはじめとする、長寿命化やリニューアルの推奨といったトレンドもあり、一定の需要は保たれるのではないかと見通せます。

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